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奇奇怪怪の百貨戯典:音楽産業も1500円の水もほぼ同じ(?)論

Podcast番組「奇奇怪怪」のMONO NO AWARE・玉置周啓とDos Monos・TaiTanが、予算100円以内で売られている中古書を今この時代に読み返す連載の第18回。前回の「「単位」は日本最古のギャル語論」を読む。

text & edit: Daiki Yamamoto

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TaiTan

今回の本はね、俺は読んでないんだけど。周啓くんはどうだった?

周啓

ふざけんなよ。

TaiTan

どうだった?って聞いてるのよ。

周啓

えー、『陰キャでニートでアイドルオタクだった僕が歌舞伎町で指名ナンバーワンホストになって水を売る理由』っていうタイトルなんだけどね。

内容もそのままで、要は「僕はなにも持っていなかったけど、自分の“好き”を貫いたら成功した」っていう話で。マジでありきたりなんだけど、「とりあえずやってみる人が成功する」っていうメッセージが刺さる時代になったんだな、と思いましたね。

著者が成功したのも、「LINEをマメに返す」「お客さんに無理強いをしない」とか当たり前のことをやった結果だったわけで。水を1500円で売るのも、誰もが思いつくけど実際にやる人はいないじゃん。でも本気で売って、ただの水に1500円出せる人を集めるだけでビジネスになるっていう。

TaiTan

へー。周啓くんとやってることは同じってことだね。

周啓

お前……。まあでも、同じか。音楽も原価はほぼ無料だもんな。

TaiTan

ほとんど付加価値で売っているようなもんだからね。偶像性というか同一性というか、「この音楽は自分たちの代弁者なんだ」って思わせる力が大事ですから。

周啓

ただ、この人は水に付加価値を付けるんじゃなくて、「ただ水が売っている」というだけの状況にお金を払ってもらうのが今っぽいんだよ。消費者が求めているものって意外と高尚なもんじゃないっていうのを教わりましたね。

TaiTan

まあ、周啓くんはこういう本から影響されるってことだね。だからバンドに「MIZ」って名づけたわけでしょ?

周啓

自己啓発本からネーミングするバンドなんかいないんだよ。

「陰キャでニートでアイドルオタクだった僕が歌舞伎町で指名ナンバーワンホストになって水を売る理由」書影
『陰キャでニートでアイドルオタクだった僕が歌舞伎町で指名ナンバーワンホストになって水を売る理由』

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