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奇奇怪怪明解事典の百貨戯典:未来予測本の タブーに触れる “答え合わせ”論

Podcast番組「奇奇怪怪明解事典」のMONO NO AWARE・玉置周啓とDos Monos・TaiTanが、予算100円以内で売られている中古書を今この時代に読み返す連載の第4回。前回の「映画に投資した 〈ぴあ〉に見る ネオ・メセナ論」を読む

text&edit: Daiki Yamamoto

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TaiTan

世の中には未来予測系の本がたくさんあるが、今回はその答え合わせをしてみようかな、と。そこで読んだのが、2007年に書かれた『全予測2030年のニッポン』(三菱総合研究所)。

周啓

データはもちろん事実なんだけど、それに基づいて書かれた「未来の生活」を予測するコラムには希望的観測が大いに含まれているよね。

TaiTan

「スマートホーム」とか「生体テクノロジー」とか「昆虫型ロボット」とか、2007年時点から未来を語ると、どうしてもテックの話ばかりになってくる。でも正直、そこへの関心はかなり薄れているんだよね。

周啓

たしかにね。本の中では「感性がもっと重要視されるようになる」みたいな話もしているんだけど、結局それも「感性工学」みたいな話になっちゃう。テクノロジーへの期待が書き手の筆致からも滲み出ていて、そこに人間味を感じて面白かったね。

TaiTan

2000年代以降はテクノロジー礼賛の文化が世界を支配したけども、それによって辿り着いた景色とはなんだったのか?っていうのが今、見直される時期に来ている。人々の関心も、生活がどう便利になっていくかよりも、世の中の不均衡がどう改善されるのかに向いている。

今はシリコンバレーの企業でも、倫理的な問題をジャッジする「エシカルディレクター」という役職に重要な人材を配置するんだよ。

周啓

なるほど。テクノロジーに夢を見ていた時代の方が、今よりも牧歌的な時代だった気がするよね。

TaiTan

当時の予測よりも人間は賢かったし、地球はもっと未知のものだった、という。というわけで結論は「さよならテック、こんにちは倫理」だね。周啓くんの感想は?

周啓

「“昆虫型ロボット”ってなんだよ」です。

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