あのページ、破って捨てた?ホラーファンが読み解く「このページは破って捨ててください」

text: BRUTUS

発売中のBRUTUSのホラー特集「もっと怖いもの見たさ。」に潜んでいた「白紙のページ」を、3人のホラーファンが読み解く。

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発売中のBRUTUSのホラー特集「もっと怖いもの見たさ。」には白紙のページがある。23、24、61、62ページだ。24ページにだけ小さく「このページは破って捨ててください」の文字。

すでにウェブ上で告知している通り、これは演出として制作したもの。乱丁、落丁ではない。不可解なこの白紙のページについて、特集に参加した3人のホラーファンに真意を読み解くコメントを執筆してもらった。

「説明が無いのは不気味」心霊ビデオ研究会

白紙ページを目にしたときの率直な感想は「何だこれ」でした。しかも一枚ならまだしも二枚も差し込まれていたので製本ミスの可能性は低い。そこに何らかの意図があるのは間違いないと思いました。

意図について考察しようと思った矢先にBRUTUS編集部から演出であったことがあっさりと種明かしされました。しかし肝心の演出意図については一切触れられていません。この説明の無さが不気味さをより際立たせていました。そしてここで、心霊ドキュメンタリーにおける“ある演出”のことが浮かびました。

心霊ドキュメンタリーでは投稿映像が一通り流れた後に、心霊現象の前後をリプレイするのが定番です。中には通常の速度で見ていると一瞬過ぎてよくわからないものもあるのですが、速度を変えてリプレイしてくれるので問題の現象がはっきりと視認できます。時にはコマ送りをしたり、明度調整や逆再生まで行う執念の分析力です。しかしこれだけの丁寧さにも関わらず、リプレイで無視される心霊現象が存在します。以下に具体的な作品名を挙げます。

・「白面の女」(『ほんとにあった!呪いのビデオ29』収録)では廃墟を訪れた男女が白面の幽霊に遭遇する光景が記録されています。問題のシーンの数分前に天井から白い手のようなものが二本ぶら下がっているのですが、この手については一切言及されません。

・「赤い人」(『ほんとにあった!呪いのビデオ32』収録)では事故現場に女性と思しき霊が二度映ります。確実に二度映っているはずなのにリプレイされるのは一度目の事象のみです。

・「家探し」(『封印映像2』収録)では一軒家を内見する男女が撮影した映像が紹介されます。真っ暗な部屋の中にぽつんと佇んでいる女性がはっきりと映りこんでいるのですが、こちらもリプレイの段階で言及されることはありません。

ここに挙げたのはあくまで一例で、言及されない心霊現象は他にもあります。もちろんこれらは単なる見落としという可能性もありますが、コマ送りで映像分析しているプロフェッショナルですからその線は限りなく低いです。よってこれらは演出と理解したほうがよさそうです。しかし演出と分かっていても、やはり説明が無いのは不気味です。もしかしたら自分が見ている素材にだけ映っているのでは?と要らぬ想像力が働いてますます怖くなります。

今回の白紙演出に触れて、あえて説明をしないこと、こんなにシンプルなことでも十分に恐怖を演出できるのだと改めて実感しました。余計な説明は意味は要らない。恐怖というのは自分の内側から勝手に湧き上がってくるものなのだから。

「まさか落丁本?」山下丸郎

編集部の村田くんからお誘い頂き、参加させて貰った今回の「もっと怖いもの見たさ。」特集。昨年のホラー特集は隅々まで楽しく読んでいたから、自分が参加させて貰った云々は置いといてとても発売を楽しみにしていました。

取次へのオーダーの予約を忘れていたので、発売日に店の近くの某書店にて購入。ペラペラとページを捲って、自分の掲載ページを確認。隣は真っ白なページ。その裏も真っ白。まさか落丁本?とも思ったけど、そんな訳ないか、と思い、また最初から読み進める。

他にも白紙のページがあることに気付く。村田くんに、この白いページは何?と聞くと、よく見てください!と返信。よく見ると、右下に「このページは破って捨ててください」と書いてある。

嫌な気持ちにさせる仕掛けだな~!分からないのって怖い。嫌な気持ちになったりビクビクするのは、その気持ちを楽しめる自分もいる。感情を揺さぶられて楽しかった!

「破って捨てる勇気が必要なのかもしれない」小川あん

「白紙でものを考える」

という表現があるけれど、現実に、目の前が急に真っ白な世界になってしまったらそれは人間にとって恐ろしいものになるだろう。

宇宙から地球を見ると緑と青が入り混じった球体であるように、人間が見えている世界には色がある。私たちは、色を介して、ものを認識している。

BRUTUSが提示した「白いページ」は、この根源的な恐怖を浮き彫りにする。

白いキャンバスに鮮やかな絵の具をのせていくように、私たちは選り好みに色を付け加えていく。(又は付け加えてしまう。)実は、その方がずっと恐ろしい。キャンバスそのものが見えなくなってしまうくらいに、白を塗りつぶしてしまう、そして本質が見えづらくなっている。自然破壊。テクノロジーの侵入。言葉の過多。複雑化した表現。

まずは、そのBRUTUSに書かれている「このページは破って捨ててください」

その意味のとおり、雑味の色で混沌とした世界に、今読者として、白紙を破って捨てる勇気が必要なのかもしれない。破った感覚を得たときに、自分の心がわずかに揺れたかどうか、ぜひ確かめてほしい。

さて、あなたはどう解釈する? ぜひSNSに感想を投稿してください。

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