ジェンダーレス、男女平等、女性の地位向上、などと昨今はセクシズムへの関心が高まっているが差別を助長する意図は勿論なく、差異を強調するためにあえて今回は性別を主語にしてみたいと思う。
男性は、めんどくさくなったら寝たふりをする。これは私が生きてきたささやかな年次で経験し発見したほんのり甘い偏見である。とにかく男性という生き物は、めんどくさくなったら一心不乱に寝たふりをしている、ことも、あるだろう。
話をしていても危機的状況だと判断した場合は寝たふりをしだし、とにかく後回しにしたい時は「寝ていた」という軽やかな睡眠詐欺を働く。
それに気がついたとして指摘することも野暮であるし「本当に寝ていた」と言われればそれまでにつき、いちいち詰めることはしないが、睡魔一本槍で状況から逃れられると思っている男性が一定数いるのはなぜなのかと考えざるを得なくなる。
以前、仕事における面倒な話を男性スタッフに切り出すと、瞬時に寝たふりをされそうになったので素朴な疑問が溢れて「なんで男の人ってめんどくさくなったら寝たふりするんですか?」と尋ねると、彼に死ぬほどウケたことがあった。死ぬほどウケてるやん。あるあるネタ見た時みたいなウケ方してるやん。わかるわかる〜やないねん、と思った私は瞬時に寝たふりをしたくなった。
いつからか私は男性の睡眠関連の発言を何ひとつ信用していないことに気がついた。もちろんこの世には本当に寝ている男性もいるのだろうが、私は本当に寝ていたとしても、もうそれはめんどくさいの信号だとしか受け取れない身体になってしまった。これまで蓄積されてきた睡眠詐欺被害の後遺症である。
とはいえ女性が面倒な時に必ず真摯に常にそれと向き合うのかと言われればそういうわけでもないだろう。面倒事に直面した際に逃避行動をとることももちろんある。ただ、やはり、私や、私の知りうる女友達たちは、あまり「寝たふり」という行為には出ないものである気がしている。
さすれば私が出会う男性たちがたまたま睡眠詐欺症候群だったのだろうか。これは性別における差異というものなのか、私のツモがたまたま寝たふりをする人たちで多牌になってしまっているだけなのか、明確な答えは見つからぬままである。
ヒコロヒー「直感的社会論」:危機的状況時における 「睡眠詐欺症候群」についての考察
お笑い芸人、ヒコロヒーの連載エッセイ第9回。前回の「薄れゆく理性、危機感...。ポケットの中の無法空間に吸い込まれないために。」も読む。
text: Hiccorohee / illustration: Rina Yoshioka