Cook

村上小説の妄想食卓「ウイスキーはカティーサーク」

きりりと角の立ったサンドイッチ、ぴったりのタイミングでゆで上がるパスタ、グラスに注がれるウイスキー……。そそる「食」のシーンもまた、村上作品の魅力だ。印象に残る名シーンをぎゅっと詰め込んだ食卓はどんな風景になるのだろう。時代背景や前後の文脈をじっくりと読み込んで具現化した「妄想食卓」へようこそ。

初出:BRUTUS No.949『村上春樹(下)「聴く。観る。集める。食べる。飲む。」編 』(2021年10月15日発売)

 

photo: Satoshi Nagare / styling: Tomomi Nagayama / cooking: Shizue Ota / text: Sawako Akune / edit: Masae Wako

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『ねじまき鳥クロニクル』第1部

僕はその隣の席に座ってスコッチのオンザロックを注文した。スコッチは何がよろしいでしょうかとバーテンダーが尋ね、カティーサークと僕は言った。
銘柄(めいがら)なんてべつになんだってよかったのだが、最初にカティーサークという名前が頭に浮かんだ。

カティーサーク

「ウイスキーはカティーサーク」

蒸留所を巡ったエッセイ『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』も著し、ウイスキー好きとしても知られる村上春樹。小説内にもウイスキーはしばしば登場する。なかでも世界的に飲まれるブレンデッドのスコッチウイスキー「カティーサーク」は、本作や『1Q84』『ダンス・ダンス・ダンス』などにも登場。このシーンなら、迷わずずっしりとしたロックグラスで。

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