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ハードリカーがある風景:フリーアナウンサー・大橋未歩が語るメーカーズマーク

強いお酒は本当は優しい。だから特別な日も、なんでもない日も、ぐいっと飲み干したくなる。割ったり、ストレートでそのまま飲んだり、カクテルを楽しんだり。8者8様の暮らしを彩る、ハードリカーがある風景。

Illustration: Hiroki Muraoka / Text: Neo Iida

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メーカーズマークに
家族を見る

正直、局員時代は「お酒=接待」のイメージだったんですよ。

入社当時はまだマッチョ社会で、新人は最後まで付き合ってナンボという時代だったし、「アナウンサーは裏回しが得意でしょ?」という暗黙のルールもあって、お酒は戦場の飲み物という感覚でした。実際はすっごく弱いんです。

父も缶ビールを2日に分けて飲むような人だし、遺伝なんだと思います。
でもお酒の味自体はすごく好きで、最初の一口が最高においしい。登山後、あまりに黒ビールが飲みたくなって下山日を早めたこともあるくらい(笑)。

本当に一口で満足するほど、飲む量は少ないんですけどね。フリーになってからは組織の会合で飲むこともなくなり、お酒がようやくご褒美になりました。

家ではキッチンドランカーというか、夕食を作りながらチビチビ飲むことが多いです。

仕事が終わって帰ると大体18時40分くらいなので、1時間で何品作れるか、ゲームみたいに追い込んで作ります。これって、料理がテレビの仕事と真逆だからだと思うんです。

Hiroki Muraoka イラスト

番組はチームでパズルを組み合わせていくものだけど、料理は素材選びから味つけまで、世界観を一人で作り上げられる。全く違うからこそ気晴らしになるし、自然と飲みたい気分になるんだと思います。

夜、グラスにウイスキーと氷をちょこっと入れて、舌で舐めるくらいの感じでとろとろ飲むのが好きなんですけど、いつからこの飲み方をするようになったんだろうって遡ったら、義理の兄が置いていった「メーカーズマーク」がきっかけでした。

結婚したばかりの頃、兄が家に泊まりに来ることになって、いろんな銘柄のボトルを持ってきてくれたんです。当時兄とは初めて会うくらいの距離感で、私も緊張していて、しかも夫は仕事で翌朝からいなくて。

ノーメイクで部屋着姿のままリビングで話をしていたら、ふと「ああ、家族になったんだなあ」と思えたんですよね。「メーカーズマーク」を見ると、そのときの記憶を思い出します。

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