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ハードリカーがある風景:アーティスト・新城大地郎が語る宮古島の泡盛“ シマ”

強いお酒は本当は優しい。だから特別な日も、なんでもない日も、ぐいっと飲み干したくなる。割ったり、ストレートでそのまま飲んだり、カクテルを楽しんだり。8者8様の暮らしを彩る、ハードリカーがある風景。

Illustration: Hiroki Muraoka / Text: Neo Iida

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神と島人を繋ぐ
宮古島のシマ

宮古島で集まると、いつも泡盛です。「シマ飲む?」って。島のお酒だから、みんな“シマ”って呼ぶんです。度数が約30度と高いので、さんぴん茶や水で割ることが多いですね。

でも、本来はストレートで少しずつ飲むのがトラディショナルらしくて。高いところからちょこちょこと注いで気泡を立てて、泡を盛るから泡盛っていうんですって。

そう教えてもらって、こういう飲み方もいいなあ、新しいハードリカーだなあと感じました。

泡盛の原料はタイ米。琉球王朝の時代に、交易が盛んだった東南アジアの米を使ったのが始まりです。集落ごとに違う泡盛があって、誰もが地元の味を愛している。お酒を酌み交わせば、その土地の仲間になれる感覚があります。

戦後、泡盛が貴重だった頃には、独り占めせずにみんなで飲む“オトーリ”という文化も生まれました。口上を述べて、エンドレスに回し飲みをする。みんなで飲むのが嬉しい、自分が注いだお酒を飲んでもらいたい、そういう気持ち。人と人との関係を、泡盛が繋いでくれるんです。

家族が集まる席では必ず一升瓶がどん、どん、って置いてあるし、料理にも使う。祭事にも欠かせなくて、例えば毎月1日と15日には、台所にいる火の神に、女性が泡盛を供える風習があります。

台所はすべてが生まれる場所であり、命が循環する場所。神棚を置き、お線香をあげて、泡盛をお供えするんです。

Hiroki Muraoka イラスト

ほかに、ある集落に伝わる“ミルク酒”という飲み方も。

1年間に何人の赤ちゃんが生まれたかを報告するお祭りがあって、早朝から泡盛に練乳を混ぜたものを作り、ツカサ(祭祀を司るシャーマンのような存在)が歌にのせて神様に伝えるんです。

お供えして、自分たちもいただく。神様は雲の上じゃなくてそばにいるっていう感覚だから、シェアするのが自然なんです。

泡盛は、昔も今も暮らしに根ざしてきた。体調や気分で味も変わる、血というか、体の一部みたいなもの。お酒という言葉では表し切れない、特別な存在です。

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