「見る」より「聴く」が、優しい時代。盲目のお笑い芸人とブックコーディネーターが語る、音声コンテンツ

エッセイ『迷ったら笑っといてください』がオーディオブック化した盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎と、今年ポッドキャストを始めたブックコーディネーターの内沼晋太郎。2人が語る、音声コンテンツの優しさとは。

illustration: Bunsitu / text: Masae Wako / edit: Sho Kasahara

内沼晋太郎

濱田さんの本、すごく軽やかで面白かったです。文章はどういうプロセスで書かれたんでしょう。

濱田祐太郎

メインの章は、ライターさんの質問に答える形でしゃべったものを文章にまとめてもらいました。ただ、合間のコラムは自分でゼロから書いています。スマホの音声入力機能を使って文章を打ち込んだあと、編集の方に整えてもらう形です。文章を書くことは仕事やSNSを含めれば、ほぼ毎日の習慣ですね。

内沼

送信する前に読み上げ機能を使ってチェックするんですか?

濱田

そうですね。話し言葉のままだと違和感がある時は、書き言葉っぽく直したり。逆に、伝えたい内容によってはあえてしゃべっているままの文にすることもあります。

内沼

濱田さんの文は、オーディブルで読み上げられた時にスッと頭に入りそうだなと思ったんです。なるほど、書き言葉と話し言葉の使い分けを意識しつつ、「話す・文になる・聴く」というプロセスを経た文章なんですね。

濱田

内沼さんはたくさんの本を読んできはったと思うんですが「目で読むこと」と「耳で聴くこと」、それぞれコンテンツの受け取り方にどう違いがあると思いますか?

内沼

音声コンテンツはたくさん聴いてますが、僕が感じるのは、「見る」世界がカオスになってきていること。YouTubeでもSNSでも、過激な映像や強い言葉が次々と目を奪いに来て、アテンションの取り合いになっている。一方で音声コンテンツは、何かを聴いている人の耳を、別のものが奪いに来ることが起こりにくいじゃないですか。だから、安心して伝えたいことを伝えて、聴きたい話を聴くことができる。最近ポッドキャストを始める人が増えているのも、目で把握するコミュニケーションに疲れたからなのかなって思います。

濱田

目と耳で言うと、テレビのファンとラジオのファンは違うってよく言われますよね。テレビで紹介されたお店は一瞬人気が出てもすぐ飽きられてしまうけど、ラジオで紹介されたお店は、そのパーソナリティのファンが何年も通うようになったりする、って。

内沼

まさしく、そこが音声コンテンツの魅力。ほかのどこよりもパーソナリティに近い場所にいる感じがするというか。親密さが守られている感じが、根強いファンを作るんだと思います。

濱田

僕も音声配信プラットフォームのstand.fmで、身の回りのことやネタを配信してるんですが、疲れてる時こそ聴きたくなる番組にしたいんです。元気じゃないと聴いてられない番組じゃなくて、聴く人がどんな体調でも受け入れられるような。

内沼

わかります。インターネットの世界では耳のコンテンツこそが、安心して覗きに行ける優しい場所になっている、そんな気がしますよね。

2人の好きな「耳で聴く」コンテンツ

濱田祐太郎

内沼晋太郎

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