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メニューはほぼ餃子だけ!伝統の味を引き継ぐ名店・広島〈清ちゃん〉

日本各地で見つけた餃子専門店。メニューはほぼ餃子と飲み物という店を取材してきました。偶然にも訪れた店のほとんどが、夫婦や家族、親族で営まれていました。独りでは生み出せない継承されてきた味。しつこいようですが、餃子は愛なんです。

photo: Tetsuya Ito / text: Michiko Watanabe

心尽くしのもてなしと餃子で元気をもらえる店

清ちゃん(広島)

すぐ横のビルに、でかでかと「ソープランド」と書かれた看板。赤い暖簾の〈清ちゃん〉は、歓楽街のど真ん中にあった。58年も歴史を刻んできた、たった8席の店の女将・千鶴子さんは、毎朝6時半には店に来て仕込みを始める。粘りが出るよう2度挽きした豚肉に、刻んだ高知のニラと青森のニンニクを混ぜ込み、特注の薄い皮で包んでいく。

広島〈清ちゃん〉のカウンター
この小さなカウンターが癒やしの社交場だ。餃子にロウソクを立ててケーキ代わりに誕生日を祝う人も多いとか。

「ほんなら、焼こか」。ラードを染み込ませた鉄のフライパンに6人前48個を一気に並べて蒸し焼きに。パチパチッと音がしてきたら蓋を開けて、クイッ、クイッとフライパンを回す。

結構な重さだろうと思われるが、動きは軽やかだ。焼いている間にも電話がひっきりなしにかかってくる。予約のノートを広げて、「12月22日、8人やね。大丈夫よ」「うーん、どう頑張っても今日はムリや。遠方から来てくれてるのにごめんね」。返事はいろいろだ。

そうこうするうちに餃子が焼き上がる。目の前には、たっぷりのモヤシの和え物と青ネギの入ったタレが置かれる。

まずは、そのまま1個。カリッ、ホロッと繊細な口当たり。2個目はおすすめ通り、観音ネギという青ネギ入りのタレにつけ、「ねぎポケット」と呼ぶ餃子のくぼみにネギとモヤシをのっけてパクリ。タレとモヤシの酸味でいくらでもいけそう。

「どお?おいしい?皮は生きとるけん、焼きは難しいんよ」。

軽妙なトークも餃子の味の引き立て役だ。

広島〈清ちゃん〉の餃子
餃子6人前48個。観音ネギはどんどん追加を。自家製ラー油は好みで。

焼き餃子1人前8個 550円。(寸)5㎝、(皮)薄、(ヒダ)6、(具)少。