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2人の餃子マスターが語る、お取り寄せ餃子のすゝめ。家でおいしく焼き上げる技も伝授!

最近、お取り寄せ餃子がやけに面白い。2人の餃子マスターがその最新事情と、家でおいしく焼き上げる技を伝授。止まらぬ餃子愛、熱々トーク!

photo: Keiko Nakajima / text: Yoko Fujimori

クック井上。

ここ数年、お取り寄せの餃子がすごくおいしくなってますよね。種類も増えていますし。

小野寺力

ええ。やはり鍵は輸送手段と冷凍技術だと思います。この2つの進化でお取り寄せ餃子が劇的においしくなっている。

クック

なるほど。僕は以前、冷凍餃子をプロデュースしたときに工場を見学したのですが、キャベツ自身も凍っていることに気づかないほどの急速冷凍で(笑)。だから、素材の細胞が壊れない。あの技術のおかげで店の味がそのまま家庭に届けられるようになったと言えるのかも。

小野寺

でもね、今や全国の名店の味を家で再現できるようになっているのに、それを知らない人がまだ多い。だから僕、憤ってるんですよ!

クック

あ、怒ってる(笑)。

小野寺

宇都宮や浜松だけじゃなく、北海道や九州にもおいしい餃子があることを知ってほしくて〈焼き餃子協会〉の活動を始めたんです。それに取り寄せると必然的に自分で焼くでしょう?

焼く間の10分間のお付き合いで「愛」が生まれて、目の前の餃子に関心を持つ。僕がお取り寄せを推奨する理由はそこなんです。

クック

大切ですね、その10分間。

小野寺

ええ。餃子は店ごとに物語がありますし、一から作るにはこねて刻んで包んで、さらに焼くという大変な手間がいる。それを毎日続ける職人さんが全国にいることを僕は伝えたい。それが自分の使命です。

クック

素晴らしい。キャベツ一つとっても季節によって水分量が違うし、皮の種類や餡の量、包むヒダの重なり具合でも味が変わる。これだけ繊細なものを年中一定の味で作るお店の人は本当にすごいです!

古今東西を食べ比べる、
それがお取り寄せの醍醐味。

小野寺

最近の傾向としては、東京の〈おけ以〉や秋田の〈園食堂〉といった老舗が続々と通販を始めていたり、地元食材を使った町興し的な商品が生まれています。

さらに大阪の〈寺田さんちの健やか餃子〉のように純粋にヘルシーさを追求したり、神戸の〈大鳳餃子〉のマカロン餃子みたいに“映え”を狙った個性派の出現も目を引きます。

クック

香川の〈たれ屋〉の「クロワッサン餃子」みたいなネーミングの妙もありますよね。千葉の〈中華料理 芙蓉亭〉も手包みですごくウマイ。

比較的安価に作れて身近な素材を具材にできる餃子は、自由度が高くて地方性や個性を表現しやすいのかも。餃子は独自の進化を遂げていい料理だと思う!

小野寺

なるほど(笑)。地方性といえば、僕は〈ぎょうざの丸岡〉から宮崎餃子のおいしさを知ったのですが、とにかく宮崎の人は“丸岡愛”がすごいんです。

冠婚葬祭にも贈り合うほど生活に浸透している一方、お店は生餃子の販売のみなので、家庭で焼く技術も自然に身についている。宮崎の餃子文化を〈ぎょうざの丸岡〉が作ったと言っても過言ではないと思います。

クック

だから宮崎は餃子に対するリテラシーが高いんですね。あと、それだけおいしいお店があるなら家で作る率は低くなるよね。

買ってきた餃子を食卓に出すのは手抜きか否かと論争になったけど、これはその土地の食文化だし、職人さんが手間暇かけたものをいただけるのだから、手抜きどころかご馳走ですよ。

小野寺

同感です。そういえば地方性は皮にも出ますよね。食感を楽しみたいのが関東、口溶けの良さを好むのが関西。ゴロッと大きめで主食になるのが関東で、小粒で一口サイズ、オヤツやビールのアテ感覚が関西。フォッサマグナまたは富士山を境に東西で分かれるという説も。

クック

なるほど(笑)。宮崎や栃木のように、野菜や豚肉の名産地には餃子店が多いし、特産物に恵まれた北海道は創作餃子が盛ん。土地の特性とリンクするのも面白い。

小野寺

ちなみに、食べ比べもお取り寄せの醍醐味の一つですよね。例えば、同じ地方で複数取り寄せれば店ごとの違いがよくわかるし、変わり種にトライしても楽しい。

クック

うーん、僕は古い人間なのでどうしても昔ながらの味を追ってしまいますが……。

小野寺

クックさん好みの老舗系なら、まずは長野の〈テンホウ〉。60年以上前、温泉旅館の女将さんが新宿歌舞伎町の〈餃子会館〉で修業した味が今も受け継がれています。

北海道・十勝の〈音更ぎょうざの宝永〉は、〈宝永食堂〉の女将の栄子さんが作った餃子が評判を呼んだのがきっかけとか……老舗はそんなエピソードを味わいながら食べる楽しみがある。

クック

背景を語りながら食卓に出すと味わいも一段と増しますよね。余談ですが、ラーメンやカレーが実は苦手という人は少なからずいるけど、餃子が嫌いな人には僕、今まで会ったことがない。

小野寺

ええ。日本の餃子って歴史はそんなに古くないのに、すでに国民食になってるのがすごいですよ。

クック井上。さん(料理芸人)

完璧な“焼き”を身につけて
真の餃子愛に目覚める!

クック

餃子はフライパンからお皿に移したときに、「わーっ」と歓声が上がるじゃないですか。やっぱり餃子の焼き目は人を喜ばせるパワーがある。焼き目ってセクシー。

小野寺

そう、コツさえ押さえれば誰でも完璧な焼き目が作れます。

クック

焼き方の説明書の通りに焼けば、まず間違いない。逆に、自分流にアレンジすると大概失敗しますよね。

説明書の文面にも店の愛情がすごく籠もっていて、僕はこれを熟読するのも大好きなんです。焼き餃子は、箱を開けてマニュアルを読んでワクワクするプラモデルに似てるのかもしれません!

小野寺

確かに、説明書通りに遂行する楽しさというか。ちなみにおいしい焼き餃子の3要素は、もちもちの皮とジューシーな餡、パリパリの焼き目。きちんと「ゆで蒸し」をして皮と餡に火を通すことが重要です。

クック

皆さん、大抵はまず焦げ目をつけようとしがちだけど、それは後でもよくて、ゆでるのが先決。フライパンに餃子を並べて、お湯を注いでから火をつけてもいい。

小野寺

最後は中火にして餃子をクルクル回すと油が全体に行き渡り、焼き目もキレイに仕上がりますよ。

クック

それにしても、包むという作業は愛情がないとできないし、餃子はつくづく平和な食べ物だと思う。だからこそ、職人さんが大変な作業をやってくれて、家で焼くだけの状態で届けてくれるお取り寄せ餃子は素晴らしい!

小野寺

僕にとって、お取り寄せの最大の魅力は“餃子が旅をしてきてくれる”こと。食卓に全国の餃子が一堂に会するなんて最高ですよ!

焼き餃子協会
“焼き”の五ヵ条

一、 フライパンはしっかり予熱。

高温で「ゆで蒸し」が鉄則。フライパンを予熱しいったん火を止める。餃子の底に油を馴染ませて並べ、湯を約100㏄。火は中火で。

二、 皮からセクシーさを引き出す。

真っ白な皮がやがて中の餡が透けるセクシーな姿になればゆで蒸し完了のサイン。湯が減りパチパチと音がするまで蓋は開けないで!

三、 残り油で餃子を踊らせる。

蓋を開け水分が蒸発したら、フライパンを回し餃子を踊らせながら油を行き渡らせる。油と小麦粉の化学反応でパリパリの焼き目に。

四、 フチの色づきが火を止める合図。

フライパンを斜め上から見て、餃子のフチが少し茶色く変化したら火を止める。見えない部分もしっかり焼き目ができているはず。

五、 フライパンを直角にして油切り。

皿を餃子にかぶせ、フライパンを90度傾けてキッチリ油を切ったら、皿を下にして餃子とご対面。さぁ、焼き目を皆に見せつけよう!

小野寺 力(〈焼き餃子協会〉代表理事)
小野寺 力(〈焼き餃子協会〉代表理事)

クック井上。の
失敗しない焼き方アドバイス

焼き始めはコールドスタートでもOK!

まずフライパンに油を引き、餃子を並べて着火。はじめ中火で徐々に強火にしても大丈夫。

油は周りでなく「上」からかける。

餃子同士がくっつかずキレイに焼けます。注ぎ口の細い容器で餃子の間にかけると完璧!

フライパンより2回り小さいお皿にON!

大皿を選びがちですが、小さい方が皿に移す際に隙間ができず、崩れず美しく盛れますよ♡

クック井上
クック井上。(料理芸人)