荒木町 たつや(四谷三丁目)
滋味深く、自腹で通えるカウンター割烹。
3ツ星店、〈神楽坂石かわ〉系列から初めて独立を許された男。〈荒木町たつや〉の店主・石山竜也さんは大きな期待と触れ込みとともに店を構えた。が、気負わず10年、20年続けられるよう、店選びにじっくり約3年を費やし、荒木町路地裏に植栽を備えた路面店を手に入れた。店は1人で切り盛りできるカウンター、さらにコースは¥7,500一本。高級店〈石かわ〉とは一線を画すスタイルだ。
食材も日本酒も日本ワインも、日本各地へ赴き、生産者と対話を重ね吟味する。作り手を知っているから、野菜や魚を切れ端や根まで大切に使う。食材の旨味を余すところなく抽出するエキスを、カツオと昆布のだしに織り交ぜつつ、端正な割烹料理に仕上げる。塩以外、調味料はほとんど使わない。旨味がじんわりと残る滋味深さが印象的だ。
実直すぎるとも映る店主が生む、体にも財布にも優しく、ずっと通いたいと思える和食店が、荒木町の路地裏に生まれた。