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グルマン温故知新:四谷三丁目〈多仁本〉料亭仕込みのだしが冴える、路地奥の実力店

テーマごとにレストランを紹介するブルータスの人気連載。今回のテーマは「和食・荒木町・カウンター」。年に一度の贅沢よりも、月に一度日常で通える店。そんな財布に優しい和食店が由緒正しき飲兵衛タウン・荒木町で開店した。滋賀県の茶懐石料理亭出身の折り目正しい和の職人が荒木町に新風を呼んでいる。

Photo: Keiko Nakajima / Text: Taketoshi Oonishi

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多仁本(四谷三丁目)

料亭仕込みのだしが冴える、路地奥の実力店。

お椀とお造り。自らの店を知ってもらうならばこの2品と、〈多仁本〉店主の谷本征治さん。荒木町路地奥の2階、決して好立地とは言えない場所で1年弱、じわじわと人気を得てきた和食店の主は、明快な答えを持つ。

大阪出身、滋賀県の茶懐石の料亭で腕を磨いた仕事は、だしに顕著に表れる。利尻昆布と真昆布の2種を用い、前日からゆっくりと水出し。あえてカツオ節よりも昆布を利かせる味わいは、口当たりが柔らかい分、丸みと甘味が主役となる食材に寄り添う。

お造りは西の魚の代表の鯛を、一番だと感じる明石産にこだわって提供する。定められた和食の歳時のルールより、毎日の築地通いで出会う旬の食材を尊重して使う。ぶれないだしとお造りこそ筋の通った谷本さんの料理の真骨頂だ。

茶の湯が趣味だという世界観は店内にも。無垢のカウンターにワラを混ぜた土壁の端正な造り。小体だからこそ大切な人と、そう思わせてくれる良店だ。

四谷三丁目〈多仁本〉店主の谷本征治さん。
独立前は南青山の和食店で3年間料理長を経験した谷本さん。
四谷三丁目〈多仁本〉店内
木と土を基調に茶室を想起させるような、無駄を省いた設えに。

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