すずのき(内幸町)
師匠ゆずりの塩づかいとだしで唸らせる。
銀座〈さとき〉で8年間腕を磨き、その後1年ほど過ごした新橋〈ほそ川〉が移転。そのまま店を引き継ぐ形で開店を果たした鈴木貴子さん。「作り込んだ料理で組み立てるコースが性に合っている」と、メニューはおまかせ一本に絞り込んだ。
つかみは、お椀。マグロ節にちょいガツオ、昆布の旨味を低い温度で抽出し、静かに濾して一本芯の通った味わいのだしに。さらに唸らせるのが刺し身。とりわけ白身魚の扱いは抜群で、塩の当て方がめっぽううまい。後半の煮物ではたっぷりの追いガツオで風味を増幅。冬瓜やナスは驚くほど味がふくよかで、ありがたみすら感じさせる。
見た目の派手さはないものの、滋味深く、心身をホッとさせるおいしさはお袋の味にも通じる。
「今の料理は師匠から受け継いだものがほとんど。これからは自分の味も出していけたら」と、控えめなご当人。味よし、人よし、値段よし。あまりの有望ぶりに系譜を辿りたくもなる。