せろ(銀座)
メルボルン仕込みのアレンジが冴える新和食。
思い描いたのは「10席前後の2人でやれる店」。縁あってコリドー街の袋小路に自店を構えるも、店主の伊藤憲二さんは「このエリアで遊ぶような若い人はうちの店には来ないと思って(笑)。当初は看板を出すつもりもなかった」と無欲なマインドの持ち主。海外志向が強く、メルボルンのモダン・オーストラリア料理〈タクシー・ダイニング・ルーム〉で経験を重ね、帰国。人気店〈可不可〉で腕を磨き、オープンに至った次第だ。
20代までコテコテの和食で腕を磨いただけに、和に軸足を置きつつ、海の向こうで体得した洋のアレンジがこの店らしい。例えば、新鮮なアイナメの刺し身には、昆布と太白ゴマ油を合わせたソースを。白イカの炊き込みご飯なら、フィッシュストックのだしを効かせて、という具合。その逆で、蝦夷鹿のローストはフレンチのように見えてどこか和テイストだから面白い。
ベテランらしい引き出しの多さに深掘りしたくもなる。