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グルマン温故知新:渋谷〈酒井商会〉九州食材と郷土の味を、選び抜いた器と酒で

テーマごとにレストランを紹介するブルータスの人気連載。今回のテーマは「繁盛酒場出身の店主」。つまみの品数や一皿の量、酒を呼ぶ味の決め方に、合わせる酒の品揃え。わがままな酒好きが、酒場に求めるあれこれを網羅する繁盛酒場から独立したお店を紹介。"アガる揚げ物"やリピートしたくなるシメの一品の魅せ方まで。さすが、技アリです。

 

Photo: Naoki Tani / Text: Kei Sasaki

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酒井商会(渋谷)

九州食材と郷土の味を、選び抜いた器と酒で。

店主の酒井英彰さん、カウンター越しに器をさっと差し出す所作が美しい。聞けば茶道をたしなんでいるとか。「料理や経営以外にも、学びを広く」とは、独立前に勤めた渋谷〈高太郎〉林高太郎さんの教えだ。

長崎〈雲仙ハム〉のハムを使った分厚いハムカツに、佐賀・呼子の郷土料理、いかしゅうまい。自身が福岡出身ゆえ、つまみのテーマは「九州の味」だ。奇を衒ったものはないのに、どの料理にもきちんと顔がある。

作家ものから骨董まで、器選びのセンスもいい。酒は食事に寄り添うナチュラルワインと純米酒の二本柱。シメは五島うどんのぶっかけ明太かごぼ天肉うどんにするか、それとも季節の土鍋ご飯か。どちらも捨てがたい。

古いビルの2階、看板はナシ。狭くて急な階段を上がると、墨色の壁、古材のカウンターの小空間が開ける。気取りはないのに、清潔で、生活感を感じさせるものがない。「いい店」オーラに食べる前から気分が上がる。

渋谷〈酒井商会〉酒井さん
丸刈りで体格のいい酒井さん。オーストラリアで3年暮らした経験があり英語も堪能。
渋谷〈酒井商会〉店内
古材のローカウンターが店のシンボル。

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