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グルマン温故知新:馬喰町〈nôl〉過不足なく、心身が満ちるクリーンな料理を

テーマごとにレストランを紹介するブルータスの人気連載。今回のテーマは「フレンチ・エリート」。東京/パリの名だたるレストランで経験を積み、自身がシェフとして腕を振るう店をオープンした料理人。野菜を得意とするシェフの表現はみずみずしく、才気煥発だ。

Photo: Shin-ichi Yokoyama / Text: Haruka Koishihara

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nôl(馬喰町)

過不足なく、心身が満ちるクリーンな料理を。

無彩色で統一されたダイニングから見渡せるオープンキッチン。腕を振るうシェフの野田達也さんは「多くの人にダイレクトに喜んでもらえる仕事をしたい」とロボット製造の会社勤めから一転、料理の世界へ。

地元・福岡の調理師学校を経て移り住んだ東京では、古賀義英シェフの下でクラシックなフランス料理の技術を培った。その後渡仏し、パリでは、日本人初の2ツ星を獲得した〈Passage53〉佐藤伸一シェフに師事。個性を、自由に皿に映し出すことの大切さを学んだ。

これらの経験から生まれるのは、各地の生産者から届く優れた素材と自身の食にまつわる記憶とを紡ぐ料理。特に野菜への思い入れは強く、茎から葉まで食材や香りづけに多用し、シロップからぬか漬けまで調味料は自家製とこだわる。食後には、野菜の端材で取るコンソメを。「体の負担にならない心地よい食後感を」という気遣いが、コース全体に貫かれている。

馬喰町〈nôl〉シェフの野田達也さん
1985年2月生まれの野田さん。
馬喰町〈nôl〉店内
客席エリアとシームレスな厨房は、使用時以外は道具類がすべて片づけられ、美しい状態。

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