中華 汀(江戸川橋)
古典をリスペクトした緻密な料理を気軽に。
四谷三丁目〈峨眉山〉を皮切りに、神楽坂〈芝蘭〉では料理長として腕を振るった江崎祐弥さん。縁があって名店が主催する四川省ツアーに参加し、「パンチが効いているのにさらりとして軽い。食材や香辛料の使い方、その何もかもが新鮮だった」と本場の味に開眼。以来、中国の古典料理を踏まえながら、理論的な調理技術と工夫で狙い通りの味を生み出している。
名刺代わりのシグネチャーメニューは、修業時代にまかないで「作りに作った」という麻婆豆腐。水溶き片栗粉の分量と濃度、入れるタイミングを見極め、豆腐に膜を張るようにして加え、煮ながら焼いて仕上げるという経験の賜物。口にしたらまず旨味、次に豆腐の甘味が広がり、清々しい辛味のパンチを残す。
予約しなくても利用できて好きなようにオーダーし、高級店で出されるような料理を気取らずに堪能する。そんな店が江崎さんの理想とするところ。おおむねその方向に進んでいる。