Kabi（目黒）
日本の伝統食文化をガストロノミーの舞台へ。
大阪、東京の有名フランス料理で修業後、デンマークに渡った安田翔平さんは、コペンハーゲンの1ツ星〈カドー〉の厨房で使われている発酵保存食材が日本の発酵食品とも共通することに気づく。発酵、だしといった日本の伝統食文化が世界で注目されているのに、国内でそれらにフォーカスした店がないことに可能性を感じ、帰国。2017年、26歳で店を開いた。
自家製発酵調味料を駆使し、手でつまむ寿司や漬物を一皿の料理に。ワインに加えビール、日本酒、カクテルと自在なペアリングを組み立てる江本賢太郎さんも各国でサービスやワインの醸造を学んだ28歳のスペシャリストだ。
「 Meat」鳥取に住む安田さんの叔父が空気銃で仕留めた山鳩。発酵シイタケのだしを蜂蜜と一緒に煮詰めたタレを塗りながら炭火で焼き、焦がしたケールと奈良漬のパウダーを添えた。血の風味に程よくタンニンのあるバルベーラフリッツァンテを合わせて。料理はすべて¥9,000のコースから。ペアリング¥6,000。 
「Sushi」「手でどうぞ」と供される、柿の葉寿司のような一品は、酢で締めてから軽く炙った魚（写真はブリ）を葉ワサビで巻いたもの。味噌とマンステールが隠し味。脂ののった炙り魚は、ナッツ香と旨味のある日本酒の燗とともに。 
「Tsukemono」カブの千枚漬け、桂剥きにした大根の糠漬けを重ね、クリームチーズや酒粕、発酵させた菊花をあしらった一皿。アサリのだしと発酵トマトジュースを合わせたソースで。ペアリングはキュウリとリンゴを使ったジントニック。
北欧系モダンフレンチともクリエイティブ懐石とも違う古くて新しい「日本の料理」を提案するファインダイニングの誕生。平均年齢25歳、持ち場もキャリアも関係なし、同じユニフォームの6人のチームがオープンキッチンを動き回る姿にも新時代の到来を感じる。
