キッチンかねじょう（幡ヶ谷）
自家製パンも美味、立ち飲みスパイスビストロ。
わずか6坪の立ち飲み屋だが、テイクアウトもできるし、週に3日は朝食営業もあり。いわく「飲める惣菜屋」。店主の上松晃大さんが料理を作り、妻の菜穂さんがパンを焼く。テイクアウトは「容器持参でオマケします」「パンは3切れ200円～」という親しみやすさだが、料理の味は、「立ち飲み屋」から想像するレベルを軽々超えてくる。
上松さんは、恵比寿や丸の内のビストロやビアバーでシェフを歴任。独立前に下北沢〈旧ヤム邸〉でスパイスの奥深さに触れ、渋谷〈アヒルストア〉でナチュラルワインとカウンターでの接客を学んだ。
「サドルバックのプティサレとダール」トップシェフらも信頼する鹿児島県〈ふくどめ小牧場〉のサドルバック種の豚を使用したプティサレ（豚の塩漬け）。フランスの伝統的な惣菜で、付け合わせはレンズ豆と決まっているが、スパイスを効かせダール仕立てにするのが、かねじょう流。ドライのカスリメティの香りが食欲をそそる。¥1,200。 
「おつまみセット」キャロットラペ、ゴーヤのポリヤル（ココナッツ炒め）、キュウリのピクルス 水切りヨーグルト添え、ビーツとカボチャのサラダ。挽きたてのクミンやコリアンダー、カルダモンが香る。内容は時季替わり。4種¥600～。 
「焼きサバポテト」軽く塩を振って一夜干しにしたサバをライムでマリネし、皮目をパリッと焼き、石臼で挽いたホールのナツメグとチャットマサラでスパイシーに仕上げる。マッシュポテトと一緒にほぐして自家製パンとともに。¥750。
素材の味を持ち上げるスパイスの効かせ方も、塩気や酸味でメリハリをつけるビストロ料理もプロの仕事だが「カレーとナチュラルワインもアリ、シャルキュトリーと芋焼酎でも」という自由度は家庭の食卓の延長線上。個の商いが残る六号通り商店街の一角。夫妻の気取りのない客あしらいも、町にしっくりと馴染んでいる。
