IL LATO（新宿三丁目）
素材重視で魚介を極める、成熟のリストランテ。
新宿三丁目〈オステリア・オリエーラ〉、南青山〈リストランテ ペガソ〉でシェフを経験した古井繁規さん。自店は「お客さんの反応が見える」とオープンキッチンに。ベテランが腕を振るうとあって、カウンター席はグルマンで埋まり、盛況だ。
コース仕立ての料理は、野菜と魚介と手打ちパスタが主役。とりわけ力を注ぐ魚介は、築地時代から市場に通っているだけに「イタリアンではうちが一番」ときっぱり。扱うのは寿司の名店や天ぷら職人が使う上物。マスなら4㎏以上と、目方にまでこだわるから恐れ入る。「季節感を大事にしたいし、実際に見てみないと。情報交換できるし、足を運ぶ料理人にはいいものを回してくれる」と、古井さん。
「鮮魚のアクアパッツァ」この日は真鯛を使用。「下処理以外、塩はほとんどしていません」と古井さん。塩味は、ハマグリで取っただしとケッパーから。水分量が少なめのトマト「シシリアンルージュ」と蒸し煮にして、ふっくらと、真鯛本来の風味を生かした仕上がりに。洗練されたスタイルで。料理はすべて¥9,900のコース料理から。 
「ミネストローネ」20種類の有機野菜を使った定番のスープ。素材の味を引き出すため、味つけは塩のみ。野菜から出た水分とブロードを仕上げに少し加える程度。甘味と酸味の一体感、くたっとした野菜の食感がいかにもイタリアンらしい。 
マスは「味がのってくる」という4㎏以上のものを仕入れる。皮目は炙って香ばしく、下には新タマネギとポロネギを合わせたサワークリーム、ハーブが彩りを添える。ねっとりとした舌触りと凝縮した旨味が楽しめる魚料理。
野菜は有機に凝り、食べ疲れないようサラダやスープ、付け合わせにも種類と量を多めに。フォン・ド・ヴォーにブロード、貝やカニとだしを使い分け、素材の味を立たせる手練れぶり。美味と向き合える出色の一軒。
