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〈グッド グッズ イッセイ ミヤケ〉のバッグはなぜ「使いたくなる」のだろう。Vol.3「箱」という知恵を形にしたバッグ「BOX」

使いたくなるバッグには、機能と遊び心と作り手の熱意がある。〈GOOD GOODS ISSEY MIYAKE〉のものづくりに迫る3回シリーズ。最終回は、毎日の暮らしの中で誰もが目にしている“箱”からヒントを得たバッグ「BOX」。プロダクトが一堂に会する展示も開催中です!

text: Masae Wako

「ものを入れて運ぶ形」の原点は、シンプルな「箱」だった

「ものを入れて運ぶ形」の原点は、シンプルな「箱」だった。ものを入れ、パタンと蓋をして収納する。置いておくことも、そのまま持ち運ぶこともできる。「BOX」は、身のまわりのそこここにある「箱」の機能を進化させたバッグ。

機能と形が結びついた、シンプルで美しい「いいもの」だ。それは、〈イッセイ ミヤケ〉が世の中に送り出す様々なデザインの原点でもある。

ISSEY MIYAKE_BOX
BOX
バッグ小・28,600円、バッグ中・33,000円、バッグ大・41,800円。カラーはテラコッタ、
グレー、ブラック、グリーンの4色。9月1日発売。

「いいもの」は、日常の道具として美しく使いやすいだけでなく、使うことでモノの成り立ちや文化にも気づかせてくれる。そんな「いいもの」を探求して2018年にスタートしたのが、雑貨開発プロジェクト〈GOOD GOODS ISSEY MIYAKE 〉。人間の知恵や工夫から生まれたデザインは、長くそばに置きたくなるし、使うたびに愛着がわいてくる。

〈GOOD GOODS ISSEY MIYAKE 〉の開発スタッフたちは、「バッグとは、何かを入れて持ち運ぶ道具である」という考えを常に念頭に置いている。だから企画にあたっては、袋やカゴ、網などの“持ち運ぶ道具”にまず立ち返るのだ。そんな中、あるスタッフが注目したのが「クローゼット」。

「ヨーロッパで長い旅をするとき、大きな箱形のクローゼットに衣服を入れて持ち運んだのが鞄の始まり……という話を聞いたんです。面白い!と興味を持ち、文献を読んだり博物館へ行ったりして徹底的にリサーチしました」。その過程で、クローゼットだけでなく農業の作業カゴや木箱、江戸時代の薬箱など四角い箱状のものに着目し始めた。

左:ISSEY MIYAKE_BOX/右:ケーキの持ち運びに使われる箱
イメージソースの一つになったのは、ケーキなどを持ち運ぶときのボックス。折り畳まれた紙を組み上げるだけで、取っ手も蓋もある「箱」になる。

「中でも特に心に留まったものが2つありました。一つは、社内の物流で使っている業務用のダンボール箱。使い捨てではなく、繰り返し使うことができる組み立て式です。もう一つはケーキを買うときに使われる紙の箱。パタパタと組み立てるだけで取っ手のついた箱ができ、使わないときは平たく折り畳めます。どちらも身のまわりに当たり前に存在しているけれど、実はとても合理的に作られている。とてもすごいものなのでは?と、感謝する気持ちが芽生えたんです」

様々な箱を分解し、折ったり組み立てたりしながら構造を観察した。どういう機構を取り入れたら、バッグとして使いやすく、ストレスなく持てるのだろう?やがて辿り着いたのが「BOX」というバッグシリーズだ。

ここで先回りして説明すると、「箱」の展開図をバッグとして設計し直し、最低限の工程で組み立てられたのが「BOX」である。本体にはシンプルな切り込みが施され、「蓋を開閉する」「底を固定する」という機能を満たす。ストラップを出し入れすることで、「箱」から「バッグ」へ変化するのも面白い。

ISSEY MIYAKE_BOX
左はバッグ小の“展開図”。これを組み上げることで右の完成形になる。素材は人工皮革。

平面から箱へ、そしてシンプルなバッグに変化する!

ISSEY MIYAKE_BOX

「いろんな箱を分解し、観察する中で、気づいたことがありました。平面のものをミリ単位で動かして立体にするとか、畳んだときもかさばらないようにするとか、知れば知るほど緻密に考えられている。どこか、〈イッセイ ミヤケ〉のものづくりに通じるものを感じたんです」と企画スタッフは言う。

ISSEY MIYAKE_BOX
様々な色・サイズの「BOX」を平面に戻したところ。一枚の平面を折ったり組み立てたりすることで、箱状のバッグになる。

一般的なバッグに使われるファスナーやマグネットなどの金具は付けず、切り込みを利用して固定する、凹凸の形状を組み合わせて開閉をコントロールする、ひっかけることで長さを調節する……という構造を選択した。

「分野は違いますが、釘を使わずに柱や梁を組み上げる木造建築の工法や、一枚の紙を複雑に折って形を作る折り紙など、日本の手仕事に似ているかもしれません」

「使う人に必要とされている機能が、そのまま意匠になっている。そういうデザインがいちばん素敵だと考えています」と企画スタッフは言う。けれど「BOX」が素敵な理由はそれだけではない。機能に加え、モノの文化や成り立ちをも形にしている点。さらに言えば、機能が、きわめてユニークでアイコニックなデザインにまで昇華している点も魅力的だ。

「箱って不思議ですよね。蓋を開け閉めする。ものをしまう。取り出す。持ち運ぶ。ごくシンプルな行為なのに、ちょっとうれしい。なので、使う人にとっていちばんうれしい箱の機能はどこにあるんだろうということを、とことん考えてつくりました」

確かに、蓋を開けたり、切り込みにスルリと差し込んで留めたりするだけで楽しい。あるいはストラップをしまって箱型になったものを家に置いて眺めるのもいい。自分の手元で「箱」と「バッグ」が行き来する瞬間は、想像以上にワクワクする。

“Think outside the box”という言葉がある。「既成概念にとらわれず、ものごとを考えよう――という意味だそうです。箱には、長い歴史の中で自然に獲得した美しい合理性がある。BOXを通じて、今まで知らなかったものの成り立ちや魅力に気づいてもらえたらうれしいですね」

ISSEY MIYAKE_BOX
BOX
箱とバッグを行き来する、新しいシリーズ。9月1日発売。右から、バッグ大・41,800円、バッグ中・33,000円、バッグ小・各28,600円。カラーはブラック、テラコッタ、グレー、グリーンの4色。

ISSEY MIYAKE INC.