『コタン生物記』Ⅰ~Ⅲ
著者が北海道中を歩き回って聞き取った、樹木、草、陸の獣、海の獣、鳥、魚、虫などについての伝承の集大成。よくぞここまでと思うほど、数多くの生物についてのさまざまな言い伝えが集められている。
『ゴールデンカムイ』にはこの本を参照した話がいくつも出てくる。ラッコの肉を食べる時はどうするかという話もここから。学術的にも価値の高い本だが、著者はもともと詩人であるだけあって、とても読みやすくて楽しい本である。
『聞き書 アイヌの食事』
アイヌ料理の作り方を知りたければこの一冊。アイヌ文化や食の専門家たちが、各地の古老から聞き取りをして、食材の採取法、保存法、調理法などについて整理している。
これを読むと実にさまざまな食材をアイヌが活用してきたことに驚かされるだろう。『ゴールデンカムイ』に出てくる料理も、これを参考にしているものが多いので、どんな味か想像してみるもよし、自分で作ってみるもよし。リスのチタタプの作り方もこの本に書いてある。
『アイヌ文化誌ノート』
アイヌ美術史の碩学(せきがく)による、アイヌの衣服や文様、道具類などに関する深い考察。例えば、アットゥシ(厚司)の下に昔は何を穿いていたのか、マキリ(小刀)にはどんな種類があるのかなど、アシリパのいでたちについてもいろいろ考える材料を与えてくれる。
文様などについても、常識的な理解を覆すような(もちろん良い意味で)論が展開されている。非常に専門的な話をしているにもかかわらず、達意の文章で大変読みやすい。
『アイヌ神謡集』
アイヌ自身が初めてアイヌの伝承をアイヌ語で書き綴った作品集。カムイを主人公にした「神謡」と呼ばれる物語が、ローマ字で書かれたアイヌ語と日本語との対訳で13編収められている。
その美しい序文と、「銀の滴降る降るまわりに」という不思議なフレーズで始まるシマフクロウの物語は特に有名。何度読んでも新しい発見がある、アイヌ文学の永遠の古典。知里幸恵はこの一冊の本を書き上げて、19歳でこの世を去っている。
『アイヌの民具』
『ゴールデンカムイ』の中に出てくる道具類の形や材質や使い方を知りたければ、この本が一番。
アイヌ文化の伝承者であり、かつ研究者である萱野茂が、民具に対する知識を披露し、実物を武蔵野美術大学の教員・学生が計測して図にしている。仕掛け弓やいろいろな罠の仕掛け方、樹皮から入れ物や舟を作る方法、アットゥシ(厚司:楡の樹皮製の着物)を織る道具の構造などを知ることができる。民具についての萱野氏の解説も楽しい。
『アイヌ歳時記─二風谷のくらしと心』
著者が自分の生まれ育った二風谷(にぶたに)での生活を振り返りながら、実体験に基づいたアイヌのものの考え方、風習、生活の知恵、かつての毎日の暮らしぶりなどを綴ったもの。
『ゴールデンカムイ』より30年以上も後の時代の話が中心だが、アシリパの住んでいたコタンや、そこでの日常もこんなふうだったのだろうということを感じさせてくれる。伝統的なアイヌ文化が息づいていた時代の、生き生きとした感覚を味わわせてくれる名著。
『アイヌの物語世界』
アイヌ民族には口承で伝えられてきた、歌やなぞなぞ、祈りの言葉など数々の文芸ジャンルがあるが、その中から「物語」を取り上げて解説したもの。
アイヌの物語には、神謡、散文説話、英雄叙事詩などいくつもの種類があり、それぞれ語り方も内容も、面白さのポイントも違っている。筆者自身の採録したものなど数多くの実例を使って、そこで描かれている世界や楽しみ方を紹介した、コンパクトだが一番わかりやすいアイヌ文学の解説書。
『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』
そのものずばり、『ゴールデンカムイ』をもっとよく知るために、アイヌ語監修者である著者が、漫画の背景となっているアイヌの世界観や知識を、いろいろな角度から解説したもの。
集英社からの出版とあって、原作の絵をふんだんに使っているだけでなく、野田サトル先生の描き下ろし漫画まで入っている。ただし、けっこう先の方まで内容をばらしているので、漫画を読んでいない人がいきなり読むのは危険かもしれない。