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山下達郎が語るギブソン&フェンダー。2大ブランドのギターから見る、名ギタリストたち

“Oldies but Goodies、古いけどいい曲”を紹介する TOKYO FM/JFM『山下達郎のサンデー・ソングブック』。音楽カテゴリー、名曲を生み出したソングライターやアーティスト、レーベルなどに焦点を当て、個人コレクションから選ぶ楽曲と共に山下達郎さんが解説している。この記事では、過去の放送を書き起こし、編纂して、達郎さんの言葉で音楽の魅力をお届けします。

text: Ryo Hasumi, Saki Miyahara, Miki Miyahara / special thanks: Fumihiko Shimamura, Hiroya Watanabe

ギブソンとフェンダー。ともにアメリカのギターメーカーで、2大ブランドとして多くの愛用者を持つ。2018年、ギターメーカーのギブソンの経営破綻のニュースを受けて放送された「ギブソンギターで棚からひとつかみ」は大きな反響を呼び、結果的にギブソンとフェンダーで計4週間にわたる企画となった。達郎さんの『サンソン』らしい視点で、さまざまなギタリストの名演がセレクトされている。

2018年5月13日OA

アメリカのギターのメーカー、ギブソンが経営破綻したというニュースが入ってまいりました。ここのところいろんな会社を買収しておりまして、経営にしわ寄せが来たんじゃないかと。でもギブソン、フェンダーは、私たちの、そしてエレキギターのルーツでございますので、ささやかな極東からの応援でございます。

チャック・ベリー「School Days」
(1957年)
チャック・ベリー「School Days」(1957年)
エディ・コクランもカバーした最高のR&R。

ギブソンは1902年に創設されたギターの会社でございます。初めはアコースティックでしたけれども、エレキギターを作り始めました。いろいろな種類が出てまして、そうしたギブソンのギターを愛用してるミュージシャン、古今東西たくさんいますので、そんな中から『サンソン』らしいセレクトで行ってみたいと思っております。まずは古いところから。チャック・ベリー。チャック・ベリーといえば335。ミスター・ギブソンですね(1)。チャック・ベリーの1957年の大ヒットソング、「School Days」。これから始めてみました。

ギブソンといいますと、最も有名な歴史上の人物はレス・ポール。何といっても、レス・ポール・モデルというレス・ポールの開発したギターでございます。特にエレキギターにとっては革命的なことをいろいろした方で、一人多重でありますとかエフェクター、いろいろな革新的なものを40 年代から50年代にかけて、既にやってしまったという(2)。たくさんヒット曲あるんですけれども、今日は1951年。チャートで7位まで上がりました。もともと、この曲はとっても古い1920年ぐらいの曲でございます。曲書いておりますヴィンセント・ローズという人は、「Blueberry Hill」の作曲者でも有名でございますが、レス・ポールの一人多重の技も冴える一曲。1951年の「Whispering」。

レス・ポール「Whispering」(1951年)
レス・ポール「Whispering」(1951年)
かわいい音色の速弾きが心地いい。

レス・ポールの名を冠しましたレス・ポール・モデル。デラックス、カスタム、スタンダード、いろんなものがあります。でも、なるべくレス・ポール以外の楽器を使ってるミュージシャンで、へそ曲がりな私としては(笑)。それでギブソンといって一番最初に思いつくのは、AC/DCのアンガス・ヤングです。SG使いでございますね(3)。ひたすらSGで突進するという、素晴らしい音色でございますが、今日は80年のアルバム、『Back in Black』。これのタイトルソングの「Back in Black」。せっかくですのでライブアルバム、92年の『AC/DC Live』から、「Back in Black」。

AC/DC「Back in Black」(1992年)
1992年のライブアルバム『AC/DC Live』収録。

2018年5月20日OA

ギブソン、レス・ポールで思い浮かんだのは、オールマン・ブラザーズ・バンドですね。ディッキー・ベッツ。デュアン・オールマンが死んだ後に、オールマン・ブラザーズ・バンドを引き継いでやりましたが、デュアン・オールマンに勝るとも劣らないギタリストでございます。彼は、レス・ポール使いで大変有名な人で、これに影響されてレス・ポール買った人もたくさんいますね。そのディッキー・ベッツが中心となったアルバムの代表作、1973年、『Brothers and Sisters』。ここからシングルカットされました「Ramblin' Man」というのは大ヒットいたしまして、アルバムもゴールドディスクでございます。この中に入ってる、大変有名な作品。7分28秒という、長尺なんですけども、素晴らしいソロで、ちっとも飽きることがありません。ジ・オールマン・ブラザーズ・バンド、1973年のアルバム、『Brothers and Sisters』から、「Jessica」。

ジ・オールマン・ブラザーズ・バンド「Jessica」(19
73年)
ジ・オールマン・ブラザーズ・バンド「Jessica」(1973年)
アルバム『Brothers and Sisters』収録。

この人もギブソンといえば出てきます。アルヴィン・リー。テン・イヤーズ・アフターのギタリストでございますが、赤い335を弾きまくって日本では一世を風靡しました(4)。ウッドストックでもハイライトでございました。1969年のテン・イヤーズ・アフターのアルバム『Ssssh』。ここから日本でシングルカットされました、速弾きのブルースソングでございます。「I Woke Up This Morning」、邦題「夜明けのない朝」。

テン・イヤーズ・アフター「I Woke Up This Morning」(1969年)
テン・イヤーズ・アフター「I Woke Up This Morning」(1969年)
アルバム『Ssssh』収録。

ギブソンはエレキギターだけではなくて、アコースティックギターもありますし、マンドリンとか、バンジョーとか、カントリー系のものでも、ものすごい優れたものがありますので、そういうものまで行ったら、とても3週間、4週間で利かないので一応ロック、R&B、ブルース系に特定しましたが、例えばジャズ系のデイヴィッド・T・ウォーカーとか、エリック・ゲイル、それから本当のジャズギターのケニー・バレルとか、ああいう人たちはみんなギブソンであります。枚挙にいとまがありませんが、なかなか全部、ご紹介できません、すいません。またの機会です。

2018年5月27日OA

フェンダーギターというのは、レオ・フェンダーという人が作って、カリフォルニアに工場があります。カリフォルニアで生まれたギターですので音が乾いているという、こじつけですね(笑)。ロックンロールの黎明期は特にソリッドボディといいましょうか、木目のエレキギターでしたので、カリフォルニアのサーフィン・ホットロッド・シーンではとにかく使われました。サーフィン・ホットロッドの草分けの人物といえば、ディック・デイル。ディック・デイル&ヒズ・デルトーンズ、1962年。これヒット曲じゃないんです、実はね。でも日本でもエレキ聴く人だったら知らない人はいない有名な、今では代表作でございます。ディック・デイル&ヒズ・デルトーンズ、1962年の「Misirlou」(5)。

ディック・デイル&ヒズ・デルトーンズ「Misirlou」(1962年)
ディック・デイル&ヒズ・デルトーンズ「Misirlou」(1962年)
映画『パルプ・フィクション』オープニングナンバー。

ディック・デイルは左利きでありまして、左利きでギターを弾くんですけども、でも右利き用の普通のストラトキャスターを左に持ち替えて弾くという、誰かと同じ。そう、ジミ・ヘンドリックスと同じなんです。ジミヘンは明らかに、ディック・デイルから影響を受けたんだという説が有力です。シアトルで、ディック・デイルのライブを見て、そういうインスパイアをされたんじゃないかという説です。

今の世界の趨勢ですと、フェンダーですとストラトキャスターか、テレキャスター。この二大勢力に分かれます。弾きやすさ、形、音、いろいろな意味で、この2つが使いやすいギター。耐久性もありますし、木目というのがありますが。ストラトキャスター弾きで、ぱっと一番最初に思い浮かぶのは、リッチー・ブラックモアであります。ひたすらストラトキャスターっていう印象があります。ディープ・パープル、1974年のアルバム『Burn』。これのタイトルソングでございます。アルバムは全米トップテンに入ったヒットアルバムであります。リッチー・ブラックモアのリフが冴えます。邦題「紫の炎」。よくつけるよな、これ(笑)。「Burn」。

ディープ・パープル「Burn」(1974年)
ディープ・パープル「Burn」(1974年)
アルバム『Burn』に収録。

そんな中で、テレキャスターでもストラトキャスターでもない、ジャガー。ジャガーが一番、最高級機種として発売されたという記憶がありますが、そんな時代のビーチ・ボーイズのレコーディング。1964年のアルバム『All Summer Long』に入っております、カール・ウィルソンがギターソロを弾く「Carl's Big Chance」。あの当時のウェストコーストのサーフィン・ホットロッドのギターならではの、ちょっと弦の太い、いい音がしております。ザ・ビーチ・ボーイズ、「Carl's Big Chance」(6)。

ザ・ビーチ・ボーイズ「Carl's Big Chance」(1964年)
ザ・ビーチ・ボーイズ「Carl's Big Chance」(1964年)
アルバム『All Summer Long』に収録。

カール・ウィルソンはこの後、エピフォンとかに流れますけども、この頃はもろフェンダーでした。

私がテレキャスターを使いたいと思った一番の原因は、スティーヴ・クロッパー。メンフィスサウンドの雄でありますが、ブッカー・TとMGズのスティーヴ・クロッパーという人がテレキャス使いでありまして(7)。この人の音にすごく影響されて、私はテレキャスターが好きになりました。スティーヴ・クロッパーは、本当に歌のバックで演奏する時の存在感っていうのが半端ない人なので、歌のバックで演奏してる曲を今日も持ってきました。お馴染みオーティス・レディングのバックがブッカー・TとMGズでずっとレコーディングをしておりました。1965年、オーティス・レディングの最初の大ヒットでございます。R&Bチャート2位、全米21位。素晴らしい表現力の歌の後ろで淡々とアルペジオを弾くスティーヴ・クロッパーの、この音がなければサザンソウルは語れないという。オーティス・レディング、1965年の「I've Been Loving You Too Long」。

オーティス・レディング「I've Been Loving You Too Long」(1965年)
オーティス・レディング「I've Been Loving You Too Long」(1965年)
邦題「愛しすぎて」。

2018年6月3日OA

やはりフェンダー使いといいますと、私の中ではザ・バンドのロビー・ロバートソンが出てきます。彼のストラトキャスターは改造したりもして、マイクが変なところにくっついているものなので(8)。何かけようかと思いましたが、ついでなので、エリック・クラプトンも行ってみようと。『The Last Waltz』のライブ盤。1978年に出ましたが、1976年11月25日のサンフランシスコのウィンターランドという所での解散ライブでございます。ここでのバンドと一緒に、エリック・クラプトンが演奏してるブルースナンバー。ボビー・ブランドの「Further On up the Road」。演奏は初めにエリック・クラプトンがソロをしまして、歌いだそうとした時にストラップが外れまして、とっさにロビー・ロバートソンが代わって弾き始めるという、かっこいいんです。それだけ(笑)。ザ・バンド・ウィズ・エリック・クラプトン、「Further On up the Road」。

ザ・バンド・ウィズ・エリック・クラプトン「Further On up the Road」(1978年)
ザ・バンド・ウィズ・エリック・クラプトン「Further On up the Road」(1978年)

なんだロイ・ブキャナンはないのかとか、ロリー・ギャラガーはどうしたとか、バディ・ガイはとか、そういういろんなことがありますがしょうがないですね。2日でこんな、これでもぱっつんぱっつんでございます。