Live

自由が優先。家具職人・蔵谷亮介の大きな工房と小さな隠れ家

今日は一日家にいる。そんな日は、心がふさぐ一日ではなく、心が解放される一日でありたい。窓からの景色にホッとしたり、いつものダイニングテーブルで一息ついたり。そこに好きな本や音楽があれば最高。平凡で穏やかな日々を称えたい今だからこそ、家のことをもっともっと好きになって暮らしたい。

Photo: Keisuke Fukamizu / Text: Tami Okano

独立した小さな場所を行き来する住まい。

家具職人、蔵谷亮介さんの住まいの構成は少し複雑で、250坪の敷地の中に、建物が4つ立っている。工房棟、ショールーム棟、キッチン棟、寝室棟。ほかにも木屋根をかけた広場があり、蔵谷さんはそこを、ピロティと呼んでいる。

「気持ちのいい季節には食事もほとんどピロティで食べます。リビングダイニングのあるキッチン棟は8坪と小さいのですが、ピロティは13坪。アウトドアリビングのような、我が家の中心です」

ピロティの前には素朴な落葉樹の庭。その庭の緑や木立が通りからの視線を遮り、まるで森の隠れ家のような雰囲気をつくっている。

「ここはガソリンスタンドの跡地で、この場所に出会った10年前は、鉄骨造の元店舗と、資材倉庫だけがありました。倉庫を工房にするのが目的で、最初はここに住むつもりはなかったんですよね」と蔵谷さん。

工房とショールームを整えると同時にキッチン棟を建設、ピロティを設けるまでが第1期。その後、庭を造ると居心地が抜群に良くなり、残っていたスペースに寝室棟を増築したのが第2期。寝室棟は夫婦2人で生活できる必要最小限の仕様で、子供ができてもそのプランは変えなかった。

いわく「子供はすぐ大きくなるし、そもそも、子供部屋がなければいけないとか、世間の常識に縛られるのが、苦手です」。

聞けば「スーツを着る勤め人になるのが嫌で、できるだけ縛られずに生きていく手段として家具職人を選んだ」という蔵谷さん。家具は受注生産ですべて1人で作る。
「スタッフがいると自分が休みたいときに休めなくなる。とにかく自由でいたい。それが暮らし方への一番の願いです」

家具職人・蔵谷亮介 工房
蔵谷亮介さんの家の家具工房。〈nomade design〉の屋号で家具はすべて1人で作る。道具の整理整頓の美しさに几帳面な仕事ぶりが表れている。工房は資材倉庫だった38坪の鉄骨造の建物を転用。すぐ隣に小さな寝室棟を建て、敷地内から毎日出勤している。

仕事場と家がそれぞれの機能を細かく分けながら独立しているのも、蔵谷さんの自由を優先した暮らしを支えている。日常の動作はほとんど敷地内で完結しつつ、家族ともその時々のモードで程よい距離を保つことができるからだ。

「あとはできるだけ目立たず、ここで自立して自分たちのペースで暮らしていけたら最高です」