特集『人生変えちゃう、1泊旅。』の「おいしい!編」ということで、今回は食中心の旅にフォーカスした1冊。人生を変えてしまうほどの料理……。自分の半生を振り返れば、札幌で食べた味噌ラーメンにいたく感動して、東京で開業すれば一攫千金では?と思ったくらいの乏しい感受性で、これ!というものは正直まだ思いつきませんでした。
でも、その土地の文化、人、景色といった、旅ならではの出会いを加味するとどうか。たとえば自分なら、新潟・十日町で出会った、夫婦で営む寿司店の記憶が。白子のおいしさに驚いて質問したところから始まり、営業後に大将&女将と横並びで飲み、寿司、そして人生(というと唐突かもしれませんが)について語り、再訪を約束した、なんてことがありました。おいしい、という時点で喜びはありますが、その作り手と言葉を交わす、その土地について学ぶ……そうすることで、感動が飛躍する、人生がちょっと変化する、ということはあるんじゃないでしょうか。
特集で訪れた、広島県のご当地お好み焼き旅もその一つ。まず、鉄板の上で繰り出される、重ね焼きのプロフェッショナルな技巧を目に焼き付ける。どれだけのお好み焼きを焼いてきたのか、どんな思いで焼かれているのか……。そんなことを想像しながら、咀嚼する。そして店主とお好み焼きの奥深い話や、旅の話をする。これだけでも、濃ーい体験になるはずです。
同じく、秋田の “発酵新世代”のお二人と出会う旅も然り。提供される一皿、一杯ごとにサプライズがありますが、なによりそれぞれの情熱、ビジョンがとびきりのスパイスで、店を後にする頃にはクラクラに(もちろん、いい意味で)。その圧倒的な情報量は、男鹿の寒風山でパノラマの景色を見ながら整えることをおすすめします。
というように、波状攻撃のように心揺さぶる、珠玉の旅8本が収録されています。お見逃しなく!