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「本当においしいアイスクリーム」編集後記:私のアイス遍歴

2024年6月3日発売 No.1009「本当においしいアイスクリーム」を担当した編集者がしたためる編集後記。

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私のアイス遍歴

“子供の時に旅先で買ってもらったソフトクリーム”が好例か、アイスは特に「思い出とセット」感の強いエモーショナルなお菓子ではないでしょうか。アイスクリーム屋さんのショーケースの前で選ぶ時はいつもワクワクするし、口に運べば、たちまち高揚感に包まれるもの。アイス自体はスッと溶けてなくなってしまうのに、味や背景はいつまでも記憶に残るというか。

思い返せば、一番古いアイスの思い出は、地元の商店で買ってもらった《宝石箱》。冷凍庫の後ろの壁に貼られた、色褪せたピンクレディのポスターの記憶がうっすらあるから、終売間近だったか。バニラアイスに赤とか緑とかの透明の氷の粒が入っていて、カリカリ齧れるのが嬉しい、あれは名作だったと。昭和レトロブームの今こそ、復刻してほしいものです。

そして私が子供の頃、アイスといえば〈サーティワン〉。従姉妹が家に来るときにいつも買ってきてくれて、当時出ていたフレーバーのほとんどを制覇したのではないかと思います。

またある時〈サーティワン〉の「アイスケーキ」の存在に気づき、しばらくの間、誕生日は毎年チョコミントのアイスケーキ。(ちなみにニューヨークのMuseum of Ice Creamのインスタによれば、チョコミントが生まれたのは1875年、歯磨き粉で有名なコルゲートによって、子供に歯磨き粉に慣れさせるためだったとか。裏が取れていないんですが、真相が気になります。)

思春期のダイエットに飽きると、大学生の私はジェラート屋さんでバイトを始めました。恵比寿の通りの角にあったガラス張りのそのお店、商店街のおじさんもおばさんも、ちょっとした隙間時間にエスプレッソを飲みにくる、カンパリとかチンザノとかお酒も置いていて、イタリアのバルみたいにコミュニティの中にある感じが好きでした。

フレーバーも、トマトとかエッグノッグとか、他で聞いたことないようなものばかりで、それこそ、お店に入るたびにワクワクしたものです。3種をスパッと盛り合わせるのも、カウンター越しに手渡すときにお客さんがニコニコになるのを見られるのも、やっていて楽しいバイトでした。

昨今のアイスやジェラートの進化は目覚ましく、今号の取材をしていて驚かされることばかりでしたが、こんなアイス遍歴がある私だからか、このアイスクリーム特集は、なんとなく、全体的に、地元、とか思い出、とかを纏った仕上がりになりました。(俳優の磯村勇斗さんにも、学生時代のバイト先の先輩のお店を訪ねてもらいました。)

皆さんもぜひ、ご自身の思い出のアイスショップやフレーバーに、思いを馳せてみてください。

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