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ハラール食材ってなに?断食の時期は宗教によって違う?世界の食文化Q&A 〜基礎知識編〜

所変われば、マナーやルールも変わる。宗教やその国の伝統によって異なる各国の食文化を理解し、心置きなく堪能するため、知っておきたい知識をまとめました。

supervision: Akiko Sunto, Akiko Ishino / illustration: Masashi Takeda / text: Akiko Yoshikawa

Q:宗教ごとの食事の制限が知りたい。

A:宗派によって異なるけれど、以下が基本。

× 禁忌とされるもの
△ 禁忌ではないが避けられるもの

イスラム教】
禁忌食材や決まりが多く、断食期間もあり。

×:豚、アルコール、血液、宗教上の適切な処理が施されていない肉
△:ウナギ、イカ、タコ、貝類、漬物などの発酵食品

【仏教】
僧侶や厳格な教徒は食事も修養の一つ。

×:肉全般、五葷(ニンニク、ニラ、ラッキョウ、タマネギ、アサツキ)*僧侶や一部の厳格な仏教徒のみ

【ヒンドゥー教】
神聖な牛は食べないが、牛乳や乳製品はOK。

×:牛、豚
△:魚介類、卵、五葷(ニンニク、ニラ、ラッキョウ、タマネギ、アサツキ)

イラスト 竹田匡志
五葷とはニンニク、ニラ、ラッキョウ、タマネギ、アサツキのこと。

宗教が生活に根づく国や地域では、信仰によって食事の制約がある。代表格がイスラム教。特に気をつけたいのは肉関連のルール。豚肉や宗教上の適切な処理がされていない肉はもちろん、そうした肉の脂やブイヨンなどもNGと厳密だが、野菜や果物、魚介類(イカ、タコ、貝類など以外)はOK。アルコールも自制心を狂わせるため禁じられている。みりんや日本酒などの調味料、菓子類に使うブランデーにも注意を払う必要が。

一方、イスラム圏でもトルコのように飲酒に比較的寛容な国も。ヒンドゥー教徒は神聖な動物である牛を食べないが、牛乳や乳製品は牛を傷つけないのでOK。仏教では厳格な教徒や僧侶が刺激の強いネギ類の五葷、動物や魚の肉を禁じている。ちなみにキリスト教はカトリック、プロテスタントともに基本的に制約はない。

Q:断食の時期は宗教によって違う?

A:国や宗教で異なる。代表的なのはイスラム教。

有名なのはイスラム教の断食「ラマダン」。イスラム暦の9月、1ヵ月間日の出前から日没まで飲食を断つ。日中は喧嘩を避け、喫煙や性交渉も断ち神への献身に没頭。断食明けにとる食事(イフタール)では家族や友人が集まり食卓を囲み、お祭りのような雰囲気に。

ヒンドゥー教徒は願掛けのため1日や1週間単位で断食することが。また、モルモン教徒は毎月1週目の日曜日を「断食日」とする。

Q:ハラール食材ってなに?

A:イスラムの教義に則って、食べることが許された食べ物のこと。

ハラールとは、イスラム法において「許可された」「合法的」という意味。食については、イスラムの教義に則って食べることが許可されたものを指す。食肉は牛や鶏などは、アッラーに祈りを捧げて特殊な方法で屠畜を行った「ハラール・ミート」を食べる。

食材も、豚やアルコールなど禁止されているものを一切含まず、イスラム教の戒律に則って調理・製造された製品であることを示す「ハラール認証」を受けたものがある。近年、イスラム圏の観光客や留学生、労働者のために、日本でも「ハラール認証」の食材や飲食店が登場しているが、少ないのが現状。ハラールの線引きは難しいため、ムスリムの意思や判断を尊重したい。

Q:ベジタリアンにも種類があるの?

A:細かく分けると10種類以上。

「飲食事業者等におけるベジタリアン・ヴィーガン対応ガイド」(観光庁)
参考:「飲食事業者等におけるベジタリアン・ヴィーガン対応ガイド」(観光庁)

「ベジタリアン」という言葉の起源は1840年。英国ベジタリアン協会の前身が出版した書物に登場した造語で、ラテン語の「Vegetus(活気のある、健全な)」が由来。動物性食品を一切口にしない「ヴィーガン」(完全菜食主義)から、鶏肉や魚は食べる「セミ・ベジタリアン」(準菜食主義)まで、10種類以上に分類される。動機もさまざまで、動物愛護、環境問題、健康への配慮、宗教的な理由など。

ベジタリアンは増加の傾向にあり、年平均の増加率(1998〜2018年)はアメリカでは3.9%、ヨーロッパでは2.6%だ。