EUROPE:ヨーロッパの新潮流
辺境グルメの“今”と古き良き伝統を知る。
ヨーロッパで美食というと西の方が登場しがちだが、年々世界の美食地図は変化している。
『ノーマ、世界を変える料理』はニューノルディック料理ブームの火つけ役となったコペンハーゲンのレストラン〈ノーマ〉の天才シェフ、レネ・レゼピに迫る。北欧の食材だけを用いたレストランというコンセプトは当初周囲からバカにされたが、彼は北欧の自然を徹底的に見直す。アリや花など農場や草原、樹木から食材を採取し、美しい料理に昇華させる。
料理人エメリル・ラガッセの人気シリーズ『イート・ザ・ワールド』第1回も北欧が舞台。新北欧料理のシェフ、マーカス・サミュエルソンを訪ねスウェーデンへ。エチオピアで生まれ養子としてスウェーデンへ渡ったマーカスは移民がもたらす香辛料と北欧の自然が融合した料理を振る舞う。
『美味しい料理の4大要素』でシェフのサミン・ノスラットが向かったのはイタリア。オリーブ、パンチェッタ、チーズの生産現場を見て、現地の人と対話し、古くから自然とともにある食を体感する。
ヨーロッパの東端に位置するジョージアで究極の自然派ワインを造る人々に密着した作品も。
グローバリゼーションが進む中、地元のアイデンティティを見出し、伝統をおのおのの方法で守り発展させる人々を見ることができる。
AMERICA(NORTH & SOUTH):
人種のカラフルさに起因する多様性の源流を巡る旅。
アメリカ料理と聞かれたら?名称は出てくるだろうが、答えるのは難しい。人種のサラダボウル・アメリカは多様な食文化がある。まずは『腹ぺこフィルのグルメ旅』でカラフルな食を堪能しよう。
人の移動にも注目したい。イギリスからの移民やアフリカからの奴隷が、文化とともに料理をアメリカ大陸に持ち込んだ。
『アフリカからアメリカへ:米国料理のルーツを辿る』では、あまり語られてこなかった黒人料理に焦点が。最初に向かったのは奴隷貿易の要だった西アフリカのベナン。奴隷とともにスパイスや野菜が大陸へと渡った歴史や、伝統料理を研究し、実践する若者に光を当てる。
『A Film About Coffee』では新しいアフリカとのフェアな関係を構築するコーヒーロースターの姿が見られる。
ラテンアメリカの食を堪能するなら『タコスのすべて』『ストリート・グルメを求めて』を。
特に後者は料理に安らぎを求めたムケッカ(ブラジルの魚介シチュー)売りの女性、家が燃えてゼロからスタートしたオアハカはメメラ売りの女性、化学の博士号を持ちペルーでセビーチェを売る男性など多様な料理と人生模様も楽しめる。
『Cooked』と『ミート・イーター』は作る行為を通して、食や自然と人間との関係を問う。アメリカ料理の複雑さを探ること、それは人種と社会について考えることにほかならないのだ。