ASIA:幅広く多様なアジアの食。
食べ物と人の関係を描く作品。
中国には「民は食をもって天となす」という言葉がある。民を飢えさせないのが良い政治という意味で、とにかく食を重んじる国民性のようだ。
『風味巡礼』を観ると中国の国土の広さ、気候風土の多様さ、豊かな食文化の深みが感じられる。中でも興味深いのは発酵だ。熟成ハムや魚の干物、5年漬け込んだ鴨、ライムの塩漬けなど。発酵技術は、厳しい気候でいかに食物を無駄にしないかと、旨さを極める工夫、その2つが融合し知恵となり継承され続けている。
職人の技術と哲学も美食には欠かせない。『アンドレ・チャンとオリーブの木』と『二郎は鮨の夢を見る』の2本は、国は違えど何より自分に厳しいシェフの物語だ。その哲学は味にも確実に表れる。
いわゆるグルメ番組ではないが、人々の食の風景に目を向けた映画がインドを舞台にした『聖者たちの食卓』。この映画にはインドカレーやナンをはじめとした、シズル感のある食べ物は登場しない。
カメラは、シク教の総本山ハリマンディル・サーヒブ(黄金寺院)に入り込み、毎日10万食が無料で振る舞われる食事の準備から片づけまでを丹念に見つめる。ナレーションも詳しい解説もBGMもない映像だからこそ、食の根源的な営みが際立つ。
OCEANIA:自然と共に生きる
新しいオーストラリアを存分に味わう。
「食は国の財産だ」と言うのは、メルボルンの人気レストラン〈アッティカ〉のシェフ、ベン・シュウリー。彼は、徹底してオーストラリア原産の食材にこだわる。店がうまく立ち行かなかった時、新たな試みをした。
火曜日を実験の日と決め、新たな挑戦をリーズナブルな価格で提供したのだ。そこで、自分らしい料理とは何かを突き詰め、海の荒々しさを表現した海藻料理「海の味」や、「赤カンガルーの塩漬け」が生まれた。料理人の哲学を皿から味わうこと。これも美食の楽しみだ。
AFRICA:アフリカ料理の入門は
スパイスが香るモロッコから始めよう!
旅行気分で気軽にアフリカ料理の入門編が楽しめるのは『デイビッド・チャンの世界を食べつくせ!』。デイビッドが訪れたのはモロッコのマラケシュ。ゲストはモデルのクリッシー・ティーゲン。
2人は、モロッコの文化を学びながら、タジン料理に舌鼓を打ち、旧市街メディナでは巨大な窯で作られる焼きラムを頬張り、屋台ではハリラやチェバキアを食べる。さらにアフリカのほかの地域の文化と食への知識を深めたい方は、アメリカの項で紹介した『アフリカからアメリカへ』もおすすめ。