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DSMGの7Fにある〈ビブリオテカ〉。小さな書店で、豊穣なアートブックの世界に迷い込む

世界的に名を馳せるメゾンがブティック内に本屋を開いた。ブランドの世界観に沿うビジュアルブックが百花繚乱。そもそもファッションも本もアートの一つ。だから実は境界線はない。服を選ぶように本を選ぼう。

Photo: Keisuke Fukamizu / Text: Hikari Torisawa

銀座〈ドーバー ストリート マーケット ギンザ〉7階、〈コムデ ギャルソン〉の代表取締役でデザイナーの川久保玲さんによって〈ビブリオテカ〉と名づけられた小さな書店がリニューアルした。

エスカレーターを挟むように置かれた本棚に並ぶのは、ここ数年、世界的な盛り上がりを見せるアートブック。アートブック専門店〈POST〉のディレクター中島佑介さんとともにキュレーションを手がける、海外出版社のディストリビューター〈twelvebooks〉濱中敦史さんによれば、

「情報を発信するならSNSやウェブが速い。そんな現代だからこそ、紙の本でしかできない表現が浮き彫りになってきた。印刷の美しさだけでなく、本をめくることによって際立つレイアウト、紙の感触、サイズ感など、物として説得力のあるデザインの本が増えています」。

物欲、所有欲を刺激するアートブックの一例として中島さんが見せてくれたのが、シェイラ・ヒックス『Weaving as a Metaphor』。「テキスタイルアーティストの作品集です。小口をフェルトのように加工した装丁はイルマ・ボーム。これぞ、紙の本にしかできない表現だと思います」。異質な存在感を放つデザインも、ただ目を引くだけでなく内容に連動していてこそ。

本というフォーマットを拡張しながらアートブックを作るデザイナーたちが新しい時代を牽引していく。この夏創刊されたコンセプトビジュアル雑誌『(RE)PICTURE』を手がける〈OK-RM〉もその一つ。デザインスタジオでありながら出版社〈InOtherWords〉を立ち上げ、写真家ダニエル・シェアやファッションブランドと協働した作品集『EX NIHILO』などを刊行して注目されている。

銀座〈ビブリオテカ〉店内
ノルウェーから届いたビャーン・ベア作品集など画集も多数。

ジャンルを横断しながらファッションの前線を切り拓く〈ドーバー ストリート マーケット ギンザ〉で本を売る。服と本の連関について、「服を見たそのままの感覚でアートブックを見て、触ってもらえたら。ファッションを愛する人は、潜在的にはアートファンだと思うんです」という濱中さんの意見に中島さんも同意する。

境界を設けないという考え方は棚作りにも反映され、建築、写真、アートなどのカテゴリーは外されて、クリスチャン・ボルタンスキーの作品から無名の個人によるZINEまで、版元も国も値段も様々なアートブックが有機的につながりながら配置される。『TOKYO ARTBOOK FAIR』と連動した期間限定の〈ZINE'S MATE SHOP〉も好評を集めた。

2019年の7月〜8月に行われた第1回では2019年の『TOKYO ART BOOK FAIR』出展者の作品を中心に構成したが、「次回からは国内外から広くアーティストを募って、多様なZINEを紹介していきたいです。作家と読者、読者同士が価値観を共有できるようなイベントも考えています」と中島さん。変化を続ける〈ビブリオテカ〉が銀座の街で、本と人との新たな出会いを生み出していく。

銀座〈ビブリオテカ〉店内
数百円から数十万円まで、価格もジャンルも様々に、アートオブジェクトと呼ばれるにふさわしい美しい本たち。現在は200タイトルほどが並ぶが、ラインナップは随時更新される。