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アウフグース世界大会の審査員を務める、欧州サウナ界の重要人物。ラッセ・エリクソンにインタビュー

アウフグースの世界大会『Aufguss WM』の審査員を務め、2023年にはワールドスパ・ウェルネス・アワードの審査員も務める欧州サウナ業界のトップクラスの人物ラッセ・エリクソンに、「アウフグース」とは何か、お話を伺いました。

photo & interview & text & edit: Yohei Kusanagi / editorial assistant: Yuji Nakano, Nao Uema, Kentaro Hashimoto, Orito Hamada / coordination: Yuji Hattori

アウフグースとは何か?
時間を遡り、時間を進める

あなたはアウフグースについて、どのように感じていますか?「アウフグースはショーで、サウナの掟を破っている」と言う人もいます。「日本では、サウナには静かに入るんだ」と言う人もいました。皆さんはどのようにアウフグースに向き合っていますか?

時々友人と会ってサウナの話をすると、サウナ室は静かだから音楽をかけるそうです。毎日同じ気分でもないし、音楽は気分を変えてくれます。日常でも気分によってロックやオペラ、クラシック、ヒップホップ、ブラックメタルなど、いろいろな音楽を聴きたくなりますよね。私自身も、サウナではいつも静かにしていたいわけではありません。毎日1人で行って静かに横たわって蒸されたいわけでもありません。気分次第で、静かに入る日もあれば、時にはAC/DCを流しながらアウフグースをする日もあります(笑)。

サウナシアター
ラッセさんが開発責任者を務めるスパホテル〈Farris Bad〉のサウナシアター。

私はなぜアウフグースが好きなのか?「蒸し風呂・空風呂」は日本のもの、「サウナ」はフィンランド、「バーニャ」はロシア、「ピルツ(pirts:ラトビアの伝統サウナ)」はラトビア、「ピルティス(pirties:スチーム式で様々なハーブが豊富に使われるリトアニアのサウナ)」はリトアニア、「テマスカル(temazcal:メキシコ先住民の蒸し風呂小屋)」はメキシコというように、各国がそれぞれ蒸気の文化を持っていますよね。「アウフグース」はまだとても新しくて、ドイツ語ではあるものの、本当の意味でドイツ人がその文化を有しているとは言い難いのです。

それは、ノルウェーで私たちもアウフグースを楽しんでいいんだ、ということを意味しています。アウフグースは自由なのです。だから私はアウフグースが好きなんですよ。「サウナ」はフィンランド的だし、「バッドステュエ(badstue:ノルウェー語のサウナ)」はノルウェー的だけど、「アウフグース」は自由なんですよ。タオル一枚あればどこででもできるというのもいいし、新たに拓かれつつあるサウナ文化です。ショーの色の強いアウフグースは、たった15年前からのもの。まだ始まったばかりの、とても新しいカルチャーなんです。

古典的なアウフグースだって、1948年頃にドイツから始まりました。その歴史はたかだか70年くらいのものです。サウナやバーニャは2,000年の、テマスカルなんて4,000年の歴史の背景があります。ですから私たちは今、アウフグースを未来に向けて発展させている最中にいるんですよ。アウフグース特有の未来を作っている感じがとても好きなのです。未来はわからないからこそいいんですよね。

私たちは過去を振り返るのが好きで、歴史的なサウナや蒸し風呂に入ったり、それを現代に蘇らせようとする傾向があります。アウフグースが時間を進めている間に、我々は時間を遡っていたりします。両方同時に存在していることが大切なのです。

そして、私はこれからの日本のアウフグースにも期待しています。でも安易に日本がヨーロッパの真似をしてしまうのは残念だと思っています。真似てしまうと失うものがありますからね。日本には独自の文化を突き詰めてほしいです。私たちも、サウナをより良くするためにアジアの文化について一生懸命学ぶ必要があると思っています。次回大会、日本の選手たちの活躍を心から期待しています。

室内プール
〈Farris Bad〉には、海にせり出した室内プールがあり、プール内には遊べるスイッチがある。

私のお気に入りのサウナはどこかって?それは、フィンランドの〈Sompasauna〉ですね。アウフグースと同じでとても自由なんです。そしてスモークサウナも!香りが素晴らしく、良い呼吸ができます。普通のサウナよりずっと浄化されますね。良い酒を飲むようなものです。たとえるならば日本酒の最高峰といったところでしょうね。とても美しいですよ。

でもサウナが嫌いという人が一定数いることもわかっています。スパにはたくさんのお客さんが来ますが、サウナが嫌いな人に会った時には「今まで間違った入り方をしていたんですよ」と伝えています(笑)。一度〈Farris Bad〉のセレモニーに参加すれば、本当に良いサウナを体験できますよ。それは世界で一番おいしいものを食べるような衝撃になるはずです!ぜひ遊びに来てください。

ラッセ・エリクソン
ラッセ・エリクソンさん。