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約2週間、サウナ漬け。“AMAMI”メンバーが「欧州サ旅」を振り返る

BRUTUS創刊誌上初となるサウナ特集にて、欧州5カ国サウナを巡る旅のレポートを寄せた編集者&サウナ研究家の草彅洋平さん。ともに旅をした“AMAMI”メンバーの84kenさんとオリティーさんも交えて「欧州サ旅」を振り返ってもらいました。

photo: KENICHI MURASE, Thermen Bussloo, YOHEI KUSANAGI

CULTURE SAUNA TEAM“AMAMI”は、草彅洋平さん率いるサウナカルチャーを考察するためのグループ。今回の旅には“AMAMI”のメンバーである、埼玉県で『川とサウナ』を主宰している84kenさんと、プロベーシスト兼お茶の師匠であるオリティーさんも帯同。約2週間にわたるサウナ三昧の旅で3人は何を感じたのか。本誌とあわせてどうぞ!

記憶に残った施設は、みんな一緒

草彅洋平

今回の「欧州サ旅」では、30カ所以上のサウナ施設を回ったのかな。

オリティー

一日に16回もアウフグースを受けたときはさすがにやばかった。

草彅

僕は時差ボケもあって、最初の頃サウナ室で実際に気絶したね。でも「ととのってる」と思って、誰も助けてくれなかった(笑)。相当ハードな旅だった。

84ken

一日に尋常じゃない回数、サウナに入りましたよね。理由は海外のサウナは巨大だから。サウナが8室以上あるのが普通なんですもの(笑)。

オリティー

事前にリストアップしたけど、行かずじまいのところもありましたね。

草彅

とにかく予定を組むのにまずは苦労したよ。結局、行く前の事前リサーチの方が大変だったかも。

84ken

幾つか、前提がありましたからね。この期間に行ったのは、アウフグースの世界大会『Aufguss WM(アウフグースマイスター選手権)』を観るためなので、開催期間中の9月中旬にオランダから入ることは決まっていて。

Aufguss WMの関係者、出演者一同。
『Aufguss WM』の関係者、出演者一同。アットホームな雰囲気があった。
photo:Thermen Bussloo
Aufguss WMの試合が行われたサウナシアター。
『Aufguss WM』の試合が行われたサウナシアター。100人以上が一度に入る。
photo:Thermen Bussloo

草彅

これは本当に観戦できてよかった。アウフグースの概念が変わってしまうくらい、欧州のショーアウフグースは日本のアウフグースと別物だった。それにすべての試合を観戦しているのは審査員か僕たちくらいしかおそらく存在していない。

オリティー

この後ドイツからノルウェー、フィンランド、エストニアを回りましたね。

草彅

本当はバルト三国のラトビアやリトアニアを回りたかったけどスケジュールが難しくてやめた。というのも、フィンランドの数百年前の歴史的なスモークサウナに入れる〈サウナキュラ〉は土曜日の夕方にしか開いていなかったから……。立地も車でしか行けない場所で、5〜9月のみというのも難易度が高いよね。

オリティー

結果、そこが一番でしたよね。

〈サウナキュラ〉の風景。サウナ小屋が並んでいる。
〈サウナキュラ〉の風景。サウナ小屋が並び、まるで映画のセットのよう。
photo:KENICHI MURASE
スモークサウナでジッと耐える3人
スモークサウナでジッと耐える3人。
photo:KENICHI MURASE
焚き火を囲みながら、〈サウナキュラ〉を守ってきたサイヤさんと話す草彅。
焚き火を囲みながら、〈サウナキュラ〉を守ってきたサイヤさんと話す草彅。
photo:KENICHI MURASE

草彅

スモークサウナに入っちゃったら、もう超えられないよ……。最高のサウナというものを知ってしまったなあ。

84ken

最高でしたね。それまで最新技術のサウナ施設を巡ってきて、どこに行っても発見があって。だけど、旅の終盤でスモークサウナを体験したら「やっぱり、すごいんだな」って。

オリティー

〈サウナキュラ〉は、湖もめちゃくちゃ気持ちよかった。

草彅

ほかに個人的によかった施設はどこ?

オリティー

ベルリンの〈Olivin Wellness Lounge Sauna〉(オリヴィン・ウェルネスラウンジサウナ)ですね。廃工場がまずクラフトビール工場になって、さらにジャーマンテクノのクラブに変わって、いまは居抜きでサウナ施設になっている。その移り変わりが面白いじゃないですか。

Olivin Wellness Lounge Sauna
外観からしてカッコいい〈Olivin Wellness Lounge Sauna〉。歴史を感じる建物の中にサウナが!?
photo:YOHEI KUSANAGI

草彅

オリティーは、常連の人とずっと喋っていたよね。

オリティー

成り立ちやドイツ人とサウナの関係なんかを聞きました。

84ken

出たあとのサ飯(サウナ飯)もうまかった。

草彅

本誌に載せきれなかった情報は、BRUTUSの特設サイトの方でも紹介していくから、そこでサ飯のことも書きたいね。84kenはどこがよかった?

84ken

エストニアの〈Kalma saun〉(カルマサウナ)ですかね。行く前はフィンランドの延長ぐらいに思っていたんですけど、いざ行ってみるとロシアとドイツが混ざったような文化で。エストニアという国自体が面白かったです。

Kalma saunの外観
〈Kalma saun〉の外観。中はヴェーニク(白樺の木)を浸すためのバケツが整然と並ぶ。
photo:YOHEI KUSANAGI

オリティー

〈Kalma saun〉はバーニャ(ロシア式サウナ)だから、みんな入浴時間が長い。ぼくらは1時間ぐらいで出たけど、そうしたら受付の女性に「早すぎるね」って。

84ken

「大丈夫か?」って心配されて聞かれましたね。嫌われたのか何かあったのかと誤解されて。

マンションの一室にあるSAUNARIVM
マンションの一室にある〈SAUNARIVM〉。ローカルの溜まり場になっていた。
photo:YOHEI KUSANAGI

草彅

ドイツの〈SAUNARIVM〉(サウナリウム)にいたときは、外気浴しているときにドイツ人から「お前たち、次はどこに行くんだ?」って聞かれたから、「違うサウナに行く」って言ったら「マジかよ……!?お前、いまサウナにいるだろ?」みたいに怒られたよね。

オリティー

極めて正しいことを言っていますよね(笑)。

草彅

「サウナはゆったりするところだよ。君たちはなにをあくせくしているんだ!」と。僕たちは仕事なんだけど(笑)。

オリティー

彼らにとって、サウナは日常のものですからね。そういう当たり前を問いかけ続けられたことで、サウナの捉え方がアップデートされていく感じはありました。

草彅

今回のサ旅で感動したポイントは?

オリティー

そうですね。日本だと「疲れた自分をサウナで元に戻す」といったサプリメント的な捉え方が多いですけど、ヨーロッパでは特効薬のようには捉えていない。サウナの文化度が高いというか、大人な感じ。そこに感動しました。

84ken

ナギさん(草彅さん)が書かれた本(『日本サウナ史』。著者である草彅さんが古今東西の文献を漁り、調べ上げた壮大なる一冊)をリスペクトしてくれる人も多かったですよね。

書籍『日本サウナ史』
『日本サウナ史』草彅洋平/著。2021年に3000部限定で刊行。サウナの賞を総ナメに。3,960円。

オリティー

医学系のバックグラウンドがある欧州サウナ業界のトップクラスのラッセ・エリクソンも「素晴らしい!」って絶賛していました。

『Aufguss WM』の審査員を務めるラッセ・エリクソンとAMAMIのメンバー
『Aufguss WM』の審査員を務めるラッセ・エリクソンと意気投合!

草彅

あまり読んでくれない日本と全然違うよね(笑)。やっぱり、海外のサウナーなどを見て、勉強は大事だと思ったなあ。海外サウナーのインテリぶりには、本当に感動しました。地域の人たちを健康にしたい。自分たちは、地域の人のために頑張るんだっていう意識が強かった。日本でもそういう意識でサウナ業界に参入する人が増えるといいと思いました。

84ken

今回のサ旅を通して「草彅洋平って本当にすごいんだな」って、あらためて感じました。旅の思い出を語っていると、気づけばナギさんの話ばっかりしていますからね。パスポートを失くしたり……。

草彅

ありがとう、いやその節は本当にごめん(笑)。『日本サウナ史』はひとりで書いたけど、今後も改訂版を出していけたら面白いじゃない。CULTURE SAUNA TEAM “AMAMI”を立ち上げたのも、そのためで。「こういう歴史がありますよ」とか「こういう参考文献がありました」って、みんなでアップデートしていきたいからなんだよ。

オリティー

そういう意味でも、実りある旅になりました。

84ken

ほんと、めっちゃいいところばかりだった。本誌で紹介しきれなかった施設、まだまだありますから。

草彅

ページ数の兼ね合いで載せられなかったところは、特設サイトでたっぷり紹介しましょう。テキスト以外に動画コンテンツもアップするので、すべてのサウナ好きにチェックしてほしい!

森の中に佇むサウナの写真
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