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大阪・千日前に佇む不夜城、味園ビルの〈ユニバース〉。深い愛をエゴ・ラッピンが語る

なんば駅から歩いて5分。千日前にこんな巨大空間があったとは!味園ビルにあるライブホール〈ユニバース〉は、1960年代、巨大キャバレーとして名を馳せた。時代を超えて変貌を遂げるレジャービルの今昔物語。2007年ごろ、ライブホール化した地下1階の〈ユニバース〉。以来、このステージで最も演奏しているのは、大阪出身のアーティスト、エゴ・ラッピンだという。味園への深い愛を2人に語ってもらった。

photo: Akira Yamaguchi / text: Yusuke Nakamura

2020年ライブホールとなっても
まだまだ宇宙パワー健在

大阪 味園ビルの外観
味園ビル/2階のバーも含め、営業時間は各店舗によって異なるので、HPなどで確認を。

中納良恵

初めて、ここに来たのはまだキャバレーとして営業してる頃で。もう20年以上前の話なんやけど、大学生の時に、友達から“よっちゃん、なんかヤバイところがあるから行こうや!”って誘ってもらって。それでここ入ったらもう衝撃で。もう宇宙やん(笑)って。

その時は隅の方で、ホステスのおばちゃんと横山やすしみたいなお客さんのやりとりの様子を見学させてもらっててんけど。当時はもうバンドをやってたから、いつかここでライブとかできたら面白いかも、と思ったのは覚えてる。若い時は特に、まだ誰もあんまりやってないことに憧れるし。だから今も〈ユニバース〉でライブやりたい若いバンドがたくさんいるのはすごくわかる。

森雅樹

自分が最初に〈ユニバース〉に足を踏み入れたのは2002年、自分たちのライブでかな。それまで味園ビル自体には何度も入ったことはあったけど、地下には足を踏み入れてなかった。自分の中では、このビル自体が音楽と関連してるイメージがあって、〈香港〉(当時、2階のスナック街にあったクラブ)もそうやし、キャバレー時代もビッグバンドが演奏してたわけで音楽とつながってる。

2階のスナック街には今はなき〈カリエンテレコード〉や〈BABY Q〉、〈かくれあわび〉(現在は東心斎橋に移転)あたりによく行ってたかな。そういえば、ここ数年は『KOYABU SONIC』の打ち上げで5階の宴会場にも行ってるし。よく考えたら、結構このビルを制覇してますよ(笑)。

中納

私も〈カリエンテレコード〉はよく行ってたなぁ。お酒を飲みに、というより音楽を聴きに行ってましたね。もし今2階で店やるなら?スナックよしえ……とか?(笑)お客さん、来てくれるかな~。“あのママ、気ィ、強いわ”とか言われそう(笑)。

2階はちょっと上の人たちがライブやったりする遊び場という感じかな。憧れもあったし。

中納

そうそう。イケてる大阪の先輩が集まってるイメージ。どんな音楽がかかってるんやろ?とか。

地下のここはやっぱり宇宙やから。東京のキャバレーだともっとオシャレというか、正統派なシャンデリアがある感じというか。

中納

ここはぶっとんでるもんな。

宇宙やから。だからいろんな音楽が合うと思う。宇宙やからなんでも呑み込む力があるような。

中納

毎回、ライブでもみんながこの空気感に引っ張られるのか、いつもより盛り上がる。それは場の力で、こんなところほかにないかも。

演者的にも楽しい。ここでは演奏してる時は冷静になれない。冷静になってる場合じゃない場所。

中納

ワクワク感とカオス感。

遊園地というか、見世物小屋の中に入ってるような気分もあるし。

中納

そうそう。

もともと自分たちの世代的にも昭和の遺産を求めるというか。昭和の時代が持っていた妖しい薫りへの憧れがあって。それを見つけるのは楽しいけど、こんな妖しさの魅力は大阪ならではかもしれない。〈ユニバース〉の妖しさは今みんなも求めてると思う。

中納

ここは不思議な力が働いてそう。ビル全体がなにかを放ってそうやし(笑)。だから味園ビルがなくなったりすることはないと思う。

大阪 味園ビル〈ユニバース〉で開催されている『Midnight Déjàvu』
2011年からここで年末に開催されている『Midnight Déjàvu』。この場所で盛り上がらない理由はない。毎年ソールドアウト必至。写真/仁礼博

味園ビルを探訪

現在、ビルには地下の〈ユニバース〉だけでなく、小さなバーなどがひしめく2階のスナック街、そして5階には巨大宴会場がある。一歩足を踏み入れれば、朝まで帰ることができない(⁉)眠らないビル。その内部にいざ!

音楽ユニット・エゴラッピン