海鮮
冬の王者はやっぱりカニ!地物の海の幸も魅力的
焼き蟹(がに)/〈あらや滔々庵(とうとうあん)〉(石川・山代温泉)
冬のお楽しみ、カニ尽くしのハイライトは漂う香ばしさと身のふっくら感が印象的。加賀大聖寺藩前田家から湯番頭を受けて18代を数える名湯の宿。ここで注目は地元・橋立漁港を中心に水揚げされたズワイガニ。
「カニにそれほど執着しない僕も、ここの焼き蟹は心からウマイと思う。目の前で焼き上げるうちに漂う香りと、火が入ってふっくらした身の旨さが印象的。ずっと食べていたいと思える。北大路魯山人が愛した宿だけに器もいい」
野菜
その宿らしさが表れる、野菜を使った絶品メニュー
野菜の地獄蒸し/〈サリーガーデンの宿 湯治 柳屋〉(大分・別府温泉)
調理は石造りの“地獄釜”におまかせ。100℃の温泉スチームで蒸し上げる。別府八湯の一つ、鉄輪(かんなわ)温泉で古くから続く名物。
「大地の力をそのままいただける感覚。今最も気に入っている料理です。温泉を利用した蒸し物は様々な温泉地で見られますが、ここは温泉自体がおいしい。飲泉するとわずかに塩味が感じられ、まるでだしのよう。その蒸気で蒸すわけですから、野菜も卵も抜群に味わい深い。調味料いらずです」
肉
ブランド牛から天然のジビエまで、個性豊かな肉料理
米沢牛すき焼き/〈時の宿すみれ〉(山形・湯の沢温泉)
女将の実家・老舗精肉店が目利きした最高ランク米沢牛の真骨頂。宿のルーツでもある大正12(1923)年創業の〈米沢牛黄木〉から米沢牛を一頭買い。
「いわば牛肉のオーベルジュ。10年ほど前に初訪問して衝撃を受けました。あらゆる部位を使った懐石仕立てのフルコースはメインを選べますが、僕はすき焼き一択。地元の味噌や醤油を合わせた独特な味噌だれがサーロインと好相性。米沢牛本来の甘味や旨味を深めます」
逸品
また食べたくなる、宿自慢の名物料理
穴子黒米寿司/〈あさば〉(静岡・修善寺温泉)
修善寺特産の黒米に穴子を合わせた、食感のコントラストも楽しい名物。海、山、里の幸を駆使した会席の一品。
「四季折々で替わる献立の中、毎回変わらず登場する定番。〈あさば〉に泊まる楽しみの一つです。ふっくら炊き上げられた口溶けの良い穴子と、プチプチもちもちした黒米。食感の組み合わせが絶妙です」。富士山の伏流水に恵まれた修善寺の水田で、地域が一緒になって田植えや収穫を行う黒米は地元の誇り。
飯/麺
わざわざ食べに行きたくなる、おいしい〆は?
パスタ/〈OSTERIA SINCERITÀ(オステリア シンチェリータ)〉(山形・赤湯温泉)
食の宝庫・置賜の今を凝縮した今まで見たこともないパスタに期待!赤湯温泉で食を軸にした地域作りが動き始めている。その担い手の一人がミシュランで星を獲得した原田誠シェフ。
「置賜(おきたま)盆地の野菜をはじめ地元食材の魅力を押し出しながらも主張しすぎることなく、イタリアンに着地させる技量とセンスはさすが。コースの一品である自家製生パスタには、春先になると山菜も具材に登場。今から待ち遠しいですね」
酒/飲料
いい湯がある宿にはいい酒、忘れられないドリンクがある
伊根満開のペアリング/〈HOTEL THE MITSUI KYOTO〉(京都・京都二条温泉)
フォン=だしを大切にするフレンチと古代米で醸す果実のような京都の酒を。“イノベーティブ京都フレンチ”と銘打ったホテル内の〈都季〉。〈リッツ・パリ〉で研鑽を積んだ浅野哲也の一皿は京都の水と食材に触発されたもの。それをさらに引き立てるのがホテルソムリエによるペアリング。
「フォアグラに2年熟成の酒粕を合わせた深みのある料理と、赤米仕込みの甘酸っぱい日本酒の組み合わせは見事。意外な相性に感服です」
朝食
朝食がおいしいことがいい宿の必須条件です
洋食朝食/〈由布院 玉の湯〉(大分・由布院温泉)
バランスが良く健やかな香りがする、毎朝でも食べたい理想の朝ご飯。雑木林を眺めながら味わう洋食の朝ご飯は〈由布院玉の湯〉の隠れた名物。中でも評判を呼んでいるのが、一貫して健康を大切にしてきた料理家・辰巳芳子直伝のクレソンスープ。
「日常の延長線上にある上質感が好ましい。丁寧にこしらえられていて、重すぎず軽すぎずバランスがとても良い。普段の朝がこんなふうに始まったらと思う理想の形です」