海鮮
活き蛸の五右衛門椀／〈国東（くにさき）温泉 海喜荘〉（大分・国東温泉）
鉢巻きを巻いた頭とくるりと巻いた太い脚。姿はひょうきん、味わい濃厚な人気もの
創業百余年、大正ロマンの風情ある宿。「豊後灘（ぶんごなだ）に面した国東半島は海鮮が素晴らしい。流通経路に乗らず都内では食せない魚介に出会えるチャンスも。漁師から“瀬ダコ”と呼ばれるマダコの塩ゆでもその一つ。活きのまま丸ごとゆでて、この形にできるのは鮮度が良いからこそ」。そのまま食べて、カボスを搾って、残ったら唐揚げにして味変も。
野菜
月仙会席／〈ゆやど雲仙新湯〉（長崎・雲仙温泉）
自然の摂理に適った大地の恵みを食すローカルガストロノミーの真髄
“半径15マイル宣言”をテーマに25km圏内で新鮮な地域の食材を調達して月替わりの献立に。「釣り師でもある板長の魚介類も素晴らしいが、目を見張るのは野菜のクオリティ。いわゆる地元・雲仙の“種採り野菜”を農家と直接取引。板長が本気の会席に仕上げます。農薬や化学肥料を一切使用しない有機農法で育った野菜の濃厚なお味が楽しめます」
肉
米沢牛のロースト／〈山形座 瀧波〉（山形・赤湯温泉）
キメが細かく、肉質しっとり。専門店に匹敵するクオリティに心震える
庄屋の屋敷や蔵座敷など地域の歴史ある建物を移築再生。改装に用いた材や家具調度も地元の優れたものを使用し、館内はさながら山形のショーケースに。「食材も地域に特化。中川強シェフが火を入れた米沢牛は誰もが認める極上のもの。きれいなサシが入っているのに脂はすっきりキレが良い。本当においしい和牛って、こうなんだなと思わされます」
逸品
コシヒカリごはん／〈ふるさとがしのばれる宿 角屋旅館〉（新潟・五頭温泉郷村杉温泉）
これぞアグリツーリズムの先駆け。明治から続く農家宿の自家栽培米
100年近く湯治客をもてなしてきた家族経営の宿。「農家が始めた宿だから田んぼも畑も自前で、野菜も米も減農薬で自家栽培。有機堆肥を入れて土を作り、五頭山の湧き水を引いて育てたコシヒカリは極めて良質。玄米で低温保存し、炊く直前に精米、敷地内の名水とガスの強火で一気に炊き上げるから、この味になるのだとか。今、一番再訪したい宿」
飯／麺
〈鬼面庵〉の蕎麦／〈酸ケ湯（すかゆ）温泉旅館〉（青森・酸ケ湯温泉）
湯治でゆったり長逗留のお供にしたい、つなぎなしのシンプルな十割蕎麦
総ヒバ造り、160畳の広さを誇る「ヒバ千人風呂」で知られる八甲田山中の一軒宿。「真冬に行って、これこそTHE 温泉だ！と衝撃を受けました。10日くらい滞在してみたい。旅館併設の蕎麦処〈鬼面庵〉の蕎麦粉100％つなぎなしの麺は独特の食感で、陸奥湾のイワシ焼き干しのだしと相性が良く、湯上がりにすするのは最高の贅沢」
酒／飲料
獺祭のバリエーション／〈岩国国際観光ホテル〉（山口・錦帯橋（きんたいきょう）温泉）
世界に冠たる岩国の酒〈獺祭〉のバリエーションを心ゆくまで
日本三大橋・錦帯橋（きんたいきょう）を見下ろす温泉宿。「山口県は銘酒の蔵元が多いのですが、中でも岩国は〈獺祭〉の造り手〈旭酒造〉のお膝元。こちらでは、今や日本を代表するブランドとなった〈獺祭〉を、定番の二割三分からスパークリングまでラインナップ。もちろん厳密に管理して良い状態をキープ。郷土料理の岩国寿司やアユと食せば、さらにおいしく」
朝食
口細鰈の一夜干し／〈著莪（しゃが）の里 ゆめや〉（新潟・岩室温泉）
炭火で焼いた一夜干しで一献。朝からほろ酔いで過ごすのも楽しい一品
弥彦（やひこ）神社の程近く、2,000坪の敷地に数寄屋造りの母屋と離れが点在。「間瀬（まぜ）漁港の魚介、地元農家の野菜や手造り味噌など土地の食材に支えられた夕食の一汁七菜の会席も素晴らしいが、そのエッセンスを味わえる和朝食も見逃せません。豆乳豆腐やイカのお造りが並び、冬はのっぺや飛竜頭（ひりゅうず）も。特に口細鰈（くちぼそかれい）の一夜干しは朝から一杯飲みたくなる味」
