『妄想テレパシー』NOBEL/著
推薦者:岩下朋世
人との距離感は難しい、いわんや超能力者をや。
主人公・中野彩子は、他人の心の声が「視える」超能力の持ち主。そのせいで成績優秀でスポーツ万能のクールなイケメン・戸田くんがなぜか自分を好きで、しかも頭の中が煩悩まみれなことを知ってしまう。他人の心の内が勝手にわかってしまうことに悩む中野さんと感情表現が苦手でなかなか心の内を人にわかってもらえない戸田くん。
現実をモノクロ、心の声をカラーで描くという表現上の仕掛けを巧みに生かして描かれる2人のなかなか進展しない恋模様がたまらない。心の声がわかれば、距離の詰め方がわかるわけでもない。それでかえって踏み込めなくなることもある。誰だって悩むし、わからなくて当たり前。そう開き直ってしまってもいいのかもしれない。
『ヴァンパイア男子寮』遠山えま/著
推薦者:ブルボン小林
距離なんて、最初から決まってるのだ。
吸血鬼になるか、気になる吸血鬼に好かれればいいんじゃないですか。絶対に首筋まで接近しないといずれ死ぬから切実。距離は必ず詰まりまくり。
今作は題名から『男どアホウ甲子園』みたいなバンカラな絵柄の吸血鬼ものを想像していたら全然違ってた。吸血鬼が血の代用品で飲むものが『怪物くん』ではトマトジュース、『ポーの一族』では薔薇の紅茶だったが、今作ではいちごジュース!甘さとかわいさが当世流のヴァンパイアで、新しい魅力を感じさせる。
常に微熱気味の可憐な主人公は、最初から壁ドン(され)三昧、甘噛み(され)三昧。距離なんて、詰める以前に最初から決まってるのだ、と読むほどに諦めのような甘い悟りを得られるだろう。
『私たちが恋する理由』ma2/著
推薦者:近西良昌
まるで恋の参考書。いろんなドキドキの詰め合わせ。
この作品は、オフィスラブをテーマにした恋愛模様のオムニバスです。いろんな登場人物の恋する瞬間が描かれています。好みのタイプの先輩にがっちり心を掴まれたり、自信を失っている時に励ましてもらって心が弾んだり、恋に落ちる瞬間は千差万別。
大人の恋のマンガなので「ここでガツガツ押したら引かれてしまうかも」とか「こういうことをしたら嫌われてしまうかも」と考えてしまい、行動に移せない描写も多々。葛藤を感じながらも、どう自然に話しかけようかと悩む姿は、自分も感じたことのあるもどかしい感情かもしれません。登場人物の誰かにはピントを合わせられると思うので、きっとあなたの状況に重なるような、エピソードが見つかると思います。
『綿谷さんの友だち』大島千春/著
推薦者:トミヤマユキコ
友達との関係に日々奮闘する高校生に学ぶ。
「気になる人」と言うと、恋愛の文脈で解釈する人もいるとは思うんですが、友情の文脈、つまり「気になるあの人と友だちになりたいけど、どうすればいいの?」と考える人もいるはず。そういう方に読んでほしい一冊です。
主人公の綿谷硝子は、人の言葉をすべて真に受けてしまう不器用な女子高生。様々な登場人物が彼女と関わることで、お互いに少しずつ変わっていく様子が描かれるんですが、大人の人間関係にも使えるポイントがたくさん出てきます。周囲と歩調を合わせられない人物が現れた時、排除するのは簡単ですが、できることなら上手に受け入れる方法を考えたい。そのお手本を綿谷さんたちが示してくれます。道徳の教科書に入れてほしいマンガです。