『orange』高野苺/著
推薦者:近西良昌
青春の尊さ、友人の大切さ、ひたむきな若者の姿に涙。
今までの人生で読んだたくさんのコミックの中でも、大好きな作品の一つ。物語は、未来で好きな人を失ってしまうという悲しい展開から始まります。
遠くない将来に死が待っている友人を必ず救うと、仲間たちが決意。辛い運命を変えようと必死に努力する高校生たちの姿を見ていると、涙が止まりませんでした。この作品の登場人物は、みんな友達思いのいい人ばかり。これを読んで胸が熱くならない人はいないんじゃないでしょうか。
読み進めていると自分の青春時代を思い出し、当時の友達に会いたくなります。疲れがたまっている時こそ、若い頃の自分のピュアな気持ちを振り返って号泣してみたら、リフレッシュできるのではないでしょうか。
『雲出づるところ』土田世紀/著
推薦者:岩下朋世
生きることの切実さ、尊さが胸に迫る。
精いっぱいに生きる人々の悲哀を誠実に描くことにかけて、土田世紀に勝るマンガ家はそういない。数ある土田世紀の「泣けるマンガ」の中でも、報われない人生がとりわけ哀切に描かれるのが本作だ。
不幸な生い立ちで孤独に生きてきた男。哀しい過去を抱え、人を愛することに臆病になった女。そんな2人が出会い、周囲の反対をよそに愛し合う。しかし、幸福な日々はほんの束の間……次々と不幸が畳み掛けるストーリーだけを聞けば、いかにもな「難病もの」と思うかもしれない。
しかし、一読すればお涙頂戴とはほど遠い熱量に満ちているのがわかるはず。なんでこんなに胸に迫るのか、これは一体何なのかと問われたら、これが土田世紀なんだよ!と答えるしかない。
『河童の三平』水木しげる/著
推薦者:青柳いづみ
それでも私はこの世界に生まれてきたでしょうか?
芥川龍之介という人間が書いた『河童』は我々の世界とよく似ているとカッパ博士は言う。その世界では、この国へ生まれて来るかどうかを母親の胎内から生まれ落ちる前に自分で選ぶことができるらしい。
そんなことがもし人間の国でもできたら、それでも私はこの世界に生まれてきたでしょうか?そんなことをずっと考えさせられる。おじいさんが死んで、さらには再会したばかりのおとうさんまで死んでしまう。
泣く三平をなぐさめる死神(自分が連れてったのに)、ひとりぼっちになってしまった三平の隣で一緒にグーグー寝ているいたずらタヌキ、三平の代わりに勉強を頑張る河童、屁で泳ぐ泳ぎ方を教える河童、みんな生きてた。大好き。水木先生フォーエバー!
『ジョゼと虎と魚たち』田辺聖子/原作 絵本奈央/著
推薦者:トミヤマユキコ
短時間で感情が揺さぶられ、読後はすっきり。
田辺聖子先生によるあの恋愛短編のコミカライズです。ジョゼと恒夫という男女を描いている点は原作と同じですが、舞台設定などに大胆なアレンジが加えられているので、原作を知らなくても全く困りません。
足が不自由なジョゼが絵を描く仕事を目指していたり、大学生の恒夫が留学に向けて頑張っているなど、2人の未来にポイントを置きつつ、この先もずっと一緒にいられるのかどうかが描かれていきます。最初は恒夫がジョゼをサポートする管理人としてこき使われているんですが、後半は立場が逆転。ジョゼが恒夫に寄り添い“全力で”励まします。
いざという時に発揮されるジョゼの瞬発力には思わず涙。感動と希望に包まれる読後感をぜひ体験してほしいです。