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ラッパー・田我流が語るジャズ。伝説から学んだ“やり続ける姿勢”

今、ミュージシャンが一番夢中な音楽、それはジャズかもしれない。ロック、ヒップホップ、R&B……音楽家は、その魅力をどう捉えているのだろうか。ラッパーの田我流におすすめの3枚とともに大いに語ってもらった。

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photo: Kazuharu Igarashi / text: Shunsuke Kamigaito

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伝説から学んだ“やり続ける姿勢”

ジャズはヒップホップの親父っすね。俺自身もヒップホップが基礎にあって、それに付随してネタ元になっているジャズを聴き漁ってました。高校生の頃「これはスゲェぞ」って衝撃を受けたのはマイルスの『Bitches Brew』。雑誌で「エレクトリック・マイルス」って言葉を見て、どんな音楽なのかと興味を持ったんです。実際に聴いてみて、その先鋭的なスタイルに驚きました。

そこから色々聴いてきたけど、個人的にジャズはやっぱり冬の冷たい空気に合うなって気がします。ジャズのミックスを作ることもあって、最近はチェット・ベイカーやビル・エヴァンス、チャールズ・ミンガスとかの名盤をよく聴いてますね。

ジャズはタフな人じゃないと続けられない音楽だと思います。伝説のジャズマン・鈴木勲さんとは生前に親交があって。彼は年を重ねても息をするようにレコーディングや演奏を続けてたんです。その“やり続ける姿勢”にはずっと憧れてますね。

ラッパー・田我流

田我流が選ぶ、おすすめの3枚

Q1:オールタイムベストは?

『Things Fall Apart』The Roots

ラップと生演奏を組み合わせた革新的ヒップホップグループのアルバム4作目で、J・ディラもビートで参加しています。高校生の時から聴き続けている、自分にとって教科書のような作品ですね。ドロドロとした黒さが渦巻いていて、言語化できないくらいヤバいものを聴いてしまったという感覚がありました。

Q2:昨年一番聴いたのは?

『Black Classical Music』Yussef Dayes

トム・ミッシュとのコラボでも注目を集めたロンドンのジャズドラマー、ユセフ・デイズのソロデビュー作品。「俺、かっこいいドラム叩いてるぜ!」という感じがわかりやすく伝わってきてすごくいい。タイトルの通り全体にブラックミュージックの豊かさがあって、リラックスしながら聴ける一枚です。

Q3:これからジャズを聴く人へのおすすめは?

『Space Is the Place』Sun Ra

独自の宇宙哲学を持つ思想家でもあるサン・ラーを代表する一枚。ジャズプレーヤーはわかりやすいものを複雑化して考える探究者ばかりなので、理解しようとしてもできないんですよ。どうせだったら最初に一番難解なものに触れてほしいと思っておすすめします。とにかく不思議でたまんないですよ。

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