み空
銀閣寺/OPEN:2024
間借りで人気を博したコーヒー店が2024年4月に独立。白川疏水沿いのレトロビルに店を構えた。店主の石倉源太さんは深めの焙煎一筋。「意識したことはないけれど、いい豆を追い求めた結果がスペシャルティだっただけ」という。
手回しの焙煎機でゆっくり焼く豆は、インドネシアやタンザニアなどから、深く焼いても香りや個性の残るものをセレクト。さらに濃いめならネル、軽く飲みたいならペーパーと、ドリップでもバリエーションを用意する。モダンさと懐かしさが入り混じる半地下の空間は、部屋上部の窓からの日差しも心地よい。
「深めのコーヒーを出す店って、そこで過ごす時間や空間を大切にしている気がします」という言葉に納得の時が流れる。
資(たすく)珈琲
北大路/OPEN:2021
店主の河合資さんは旅先のメルボルンでカフェが街のハブになっていること、日々にワクワク感があることに魅了されて移住。カフェで働き始めた。そのスタイルを京都に伝えるべく、抜けのある賀茂川沿いに店を開いたのは2021年末のこと。
現地〈Wood and Co Coffee〉の豆を空輸して淹(い)れるコーヒーの味わいも、河合さんの気取らない人柄も相まってたちまち人気店へと躍り出た。
賀茂川ランや散歩の帰りに立ち寄る人、出勤前の一杯がルーティンになった人も多く、その賑わいぶりは新たなコミュニティの登場を感じさせるもの。今夏から始めた自家焙煎など進化し続ける様子にも注目したい。
COYOTE Roastery
出町柳/OPEN:2024
豆を産地買い付けする店主が増えたとはいえ、現地の農園に住み込み栽培から出荷までを経験した人は多くないはずだ。門川雄輔さんは〈小川珈琲〉を経て、「スペイン語圏で、コーヒーの歴史が長い国に行きたかった」とエルサルバドルへ。
1年半の経験を積んで帰国した後、ダイレクトに現地の味を届ける焙煎所を構える。2021年にはカフェを、2024年3月には待望の焙煎機を導入し新たな拠点を開いたところ。現在も年に1度は現地へ足を運び、約12軒の生産者の豆を扱うインポーターでもある。
「エルサルバドルの一番いい豆を持っているという自負もあります。サプライチェーンのすべてに携わりながら、最高峰のパカマラ種などクオリティの高い豆を届けられたら」。
Yoshihara
二条城北/OPEN:2023
二条城北の住宅街にひっそりとあるスタンドのメニューは極めてシンプル。「浅煎りのシングルオリジンにフォーカスしつつも、情報はあえて伝えずに。届けたいのは目の前にある一杯のコーヒー」と店主の良原皓介さん。
会社員時代に飲んだ〈ウィークエンダーズコーヒー〉や〈フグレン〉で浅煎りに魅了されコーヒーの世界へ。〈小川珈琲〉を経て、〈Kurasu〉ではロースターとして活躍した。妻の春菜さんとともに、満を持しての独立では日々3〜4種の豆を揃え、一口飲んで心に響く一杯を抽出する。
「増え続けるスペシャルティと、昔ながらの深煎りが京都で共存するのは、店へ足を運ばせる人の魅力があってこそ」。
Coffee Base NASHINOKI
御所東/OPEN:2022
焙煎所でもある四条烏丸店を皮切りに、市内に4店舗を展開する〈コーヒーベース〉の一軒。京都御苑のすぐ東にあって、京都三名水の一つ、染井の水のある梨木神社境内に作られたコーヒースタンドだ。
建物は大正時代に御所から譲り受けた、旧春興殿という由緒がまた歴史を感じさせている。豆は中煎りと深煎りの2種のブレンドから10種類のシングルオリジンまで。その味わいを際立たせるのは水。氷を作るのにも使う贅沢ぶりで、雑味のない澄んだ味を作り出す。
ディレクターの牧野広志さんが店頭に立つ日もあり、京都コーヒー巡りの起点にする人も多いという。予約すれば同じ豆を異なる抽出方法で味わい、和菓子とのペアリングを楽しむコーヒーコースも用意されている。
cité
河原町六条/OPEN:2023
古着とコーヒー〈シテ〉は、数ある店のなかでも強く多様化を実感する存在。共にパリに長く暮らした吉田明史さんが古着を、パートナーのテイさんがコーヒーを担当する。
台湾人のテイさんはそもそもフルート修業のためパリへ。練習の合間に飲む一杯のコーヒーに幸せを感じる日々を過ごしていたところ、旅先のオスロでスペシャルティに出会い開眼。真剣にコーヒーに向き合い始めたという。
「コロナ禍で演奏ができずに帰国。台南〈LunCafe〉で修業させてもらうことに。台湾ではお茶文化のあとにコーヒーが入ってきたので、浅煎りがすっと馴染んでいます。浅煎りだからこそ引き出せる、果物を感じる甘味や酸味を味わってもらえたら」。