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世界からお届け!SDGs通信 トロント編。教育格差を埋める、本のシェアサービス

毎号、世界中から届いた旬の話題を紹介しているBRUTUS本誌の「ET TU, BRUTE? CITY」から出張企画。世界中の約30都市から、今一番ホットなSDGsに関する取り組みをお届けします。今回はトロントから!

text: Hatsuki Matsui / edit: Yuriko Kobayashi

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気に入った本はもらえる!寄付で成り立つ、子供のためのBOOK BANK

トロントに3カ所ある〈THE CHILDREN’S BOOK BANK〉は18歳以下なら誰でも訪れることができる少し特別な本のシェア施設。返却が必要な図書館とは違い、一回の来訪につき気に入った本を一冊自分のものにできる。予約も登録もいらず、毎日訪れてもいい。

カナダの義務教育制度は整っているが、習い事やサマーキャンプは高額かつ何を買おうにも物価が高く、家庭環境による教育格差は必然的に開いてしまう。〈THE CHILDREN’S BOOK BANK〉はどんな環境の子供にも本だけは平等に与えたいという、企業や個人の財団からのドネーションで成り立つ。

たとえばカナダ最大の子供向け書籍出版社SCHOLASTICは彼らに5年以上の支援を続けており、2024年だけでも3万冊の書籍を寄付。トロントに拠点を置く大手児童書籍出版社Annick Pressは今年の7月に3万5000冊の書籍を寄付し、一度の寄付の最大冊数を更新した。

個人寄付も定期的に受け入れており、新品同様または新品の本のみ受け入れ可能だ。寄付される書籍の80%が二次使用された新品同様の書籍とのこと。BOOK BANKから識字センターや各種社会福祉施設などへさらなるドネーションも行い寄付の循環も生まれている。

学校の遠足地としても人気で、生徒一人一人が好きな本を選ぶ時間はエキサイティング。本を買ってもらう経験が少ない子には特別な体験だ。子供同士で新たなシェアも生まれるだろうし、それぞれが本に思い出を宿していくことだろう。

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