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世界からお届け!SDGs通信 メキシコシティ編。道を愛して、川を取り戻せ!建築デザインスタジオの熱き挑戦

毎号、世界中から届いた旬の話題を紹介しているBRUTUS本誌の「ET TU, BRUTE? CITY」から出張企画。世界中の約30都市から、今一番ホットなSDGsに関する取り組みをお届けします。今回はメキシコシティから!

text: Miho Nagaya / edit: Hiroko Yabuki

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ユニバーサルな道づくりが、水問題解決のカギになる

四方を山々に囲まれた盆地であるメキシコシティは、17世紀までは山からの豊かな水を受ける湖上都市であった。だが現在は慢性的な水不足を抱えていて、都市圏のための貯水システムの水位は2019年より24%少なくなっている。そんな問題を解決するために活動するのが、首都を拠点とする建築デザインスタジオ〈Taller 13〉だ。博物館で都市圏の水質や水不足問題をビジュアル化するアートの展示をしたり、ユニバーサルな道路をつくるためのクリティカル・マスを行ったり。海外の都市計画にもアドバイスをするなど、建築デザインの枠を超えて多岐にわたる。代表のエリアス・カタンは自身を建築家ではなく、アクティビストだという。

チームは2003年に設立された。その当初から、市内でも交通量の多い高架、ビアドゥクトの下を流れるラ・ピエダー川に水を戻し、CO2減少を目的とする〈Ecoducto〉という道路に並行した遊歩道を通す計画を提唱。それは雨水を受けるシステムや汚染水を濾過するための人工沼を設置し、90種以上の植物を植え、市民の憩いの場とするもの。干からびた川の前で「ピクニック」という名の政府へのプロテストを何度も行い、そのたびに強制退去させられたが、なんと市政府がその要望をのみ、コンセプトを彼らに依頼した。政府は2018年に〈Ecoducto〉の設置を完了したが、政権交代後は管理が不十分で機能していないと、カタンは嘆く。

「まず車中心の社会を変える必要がある。山を切り開き、川を埋め立てて道路をつくるような状況があり、多くの川が危機にある。そして街の道路も車優先ではなく、高齢者や子ども、障がい者、自転車が安全に利用できて、植物エリアもあるものでなくてはならない。その実現には住民ひとりひとりが改革を意識することが必要だ」と語る。

そこで、みなが親しみを持てる方法として、道や都市づくりを遊びながら学べるカードゲームを生みだした。これが評判となり、内外の大学などの教育、研究機関からも依頼があり、講演も頻繁に行っている。「〈#amatucalle(君の道を愛せ)〉をスローガンに、草の根活動をしているよ。自分たちの暮らす場所の道を、より居心地の良いものにしようとすることから始めよう!」(カタン)

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