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世界からお届け!SDGs通信 メキシコシティ編。オンライン診断とピル宅配で中南米のタブーに挑む〈NUME〉

毎号、世界中から届いた旬の話題を紹介しているBRUTUS本誌の「ET TU, BRUTE? CITY」から出張企画。世界中の約30都市から、今一番ホットなSDGsに関する取り組みをお届けします。今回はメキシコシティから!

text: Miho Nagaya / edit: Hiroko Yabuki

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的確な婦人科医療を、気軽に受けられるシステムを開発

ラテンアメリカでは、およそ8割がカトリック教徒であり、社会的に避妊や人工中絶に対してのイメージはよくない。性教育がきちんと行われていないことで、10代で妊娠する少女たちが多いのも問題のひとつだ。いまだに人工妊娠中絶が合法でない国もあり、違法の中絶により、命を落とす女性もたくさんいる。

そんななか、アルゼンチンの女性たちは100年以上禁じられていた合法中絶のための大きな運動を起こし、同国では2020年に妊娠14週目までの人工妊娠中絶を認める法案を可決した。メキシコでは2023年に最高裁が全州での人工妊娠中絶をようやく認めている。

状況が大きく変わるなか生まれたのが、オンラインによる婦人科診断と避妊薬(ピル、パッチ、リング)宅配の〈NUME〉だ。フェミニズム運動が成功しているメキシコとアルゼンチンを拠点に開始したが、ラテンアメリカの他の国にも広げていこうとしている。

CEOでアルゼンチン出身の婦人科医、イングリッド・ブリッヒレル氏によると、「メキシコでは妊婦のケアに関してのマーケットは多く存在するが、妊娠を望まない女性たちへのケアは進んでいない。それが同地を拠点にした理由の一つ」だという。 「ホルモンバランスが崩れるからと、ピルを避けている人にこそ〈NUME〉を使ってほしい。医師に相談すれば、薬の種類をアレンジできるし、自己判断で買うよりも安全なのです」とブリッヒレル氏は語る。

身体の悩みにより処方をパーソナライズできる点が、患者たちからも好評だ。〈NUME〉に参加する医師たちは、性について自由に語れなかったり、恥ずかしいと考えて踏み切れない女性たちの現状をフェムテックの力で変えようとしているのだ。

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