世界の最新知見を導入した、安定供給技術が急速に発展中
国土が狭く水資源の乏しいシンガポールでは、独立以降、水の供給をマレーシアからの輸入水に頼ってきた。しかし水の輸入協定が2061年に期限を迎えることから、政府主導にて、水資源確保の取り組みを実施している。いまでは水処理関係の企業や研究機関が世界中から集まり、最先端の研究開発拠点の一つと言われるまでに。これらの中核を成す取り組みが、高度下水処理と海水淡水化、2つの技術の開発と実用だ。
前者については、下水処理場で通常の処理が終了した水に、さらに3段階の浄化処理を施し、飲用可能な水準まで引き上げる技術を開発。この再生水は「NEWater」と名づけられ、2003年から実用がスタート。現在、5カ所の製造工場が稼働し、工業用水のみならず、家庭用水としても、国内水需要の約40%を賄うまでに成長。目標は、2060年までに、この割合を55%まで引き上げること。クラフトビール店〈BREWERKZ〉がNEWaterを使ったビールを発売するなど、今後の活用と発展に期待が集まっている。
一方、海水の淡水化は、2005年に成功。シンガポールの持続可能性の目標を設定する計画書「Singapore Green Plan2012」において、2060年には国内における水の需要の25%以上をこの淡水化させた海水で賄うことが盛り込まれたが、2022年時点で目標値をクリア。現在は30%を目指している。
なお、NEWaterと淡水化させた海水は、降雨量に左右されないため、今後も造水量を高めていくことが可能。しかし、これらの技術には、雨水処理よりも多くのエネルギーを要するため、一時CO2排出量が問題視されるように。そこで実施しているのが「カーボンゼロ・グランドチャレンジ」。水資源分野からのCO2排出量(正味排出量)を実質的にゼロにする、革新的なソリューションを募集するプログラムだ。受賞者には、賞金や実証実験の機会といったインセンティブが付与される。海外からの応募も受け付けており、外国企業とも協業しながら、地球に優しい形での安全な水の供給に向けた開発を強力に推進していく構えだ。