市民の要求する充電インフラを整え、EVシフトを加速させる
豪自動車産業は、市場規模の小ささと人件費の高さ、製造コストの上昇などから国内製造から撤退し、現在オーストラリアは完全な自動車輸入国である。EV需要は拡大しているものの、供給不足や車種が限られていることに加え、充電インフラの問題からEV普及に関して他の国に後れを取っている。そこで豪政府は昨年、手頃な価格のEVの普及や、充電インフラの拡充を目標に掲げたEV国家戦略を発表。2025年1月から新車の乗用車を対象に燃費基準を導入し、二酸化炭素(CO2)排出量の上限を設定する。さらに再生可能エネルギーでEVを充電できるように再エネへの投資や、公共交通システムの改善、カーシェアリングなどで、渋滞や大気汚染の改善を図る。
そんななか都市部のEV所有者が直面する充電の課題に取り組む〈Kerb Charge〉が、自治体と協力して行ったEV充電器の路上設置の試験運用の成功は、駐車場を持たない住民にとってEV充電を身近で便利なものにするための大きな前進となった。
また同国のスウィンバーン工科大学が主導するプロジェクトは、高速道路を走行中にトラックやバスのワイヤレス充電を可能とするもので、政府の支援と学界、そして産業界が協力し、大型車の電動化に正面から取り組んでいる。これらの試みはオーストラリアの持続可能な交通エコシステムの基礎を築きつつある。こうした取り組みを加速させるためにも政府、企業、自治体、市民が協力し、継続的な努力をすることが不可欠だ。