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世界からお届け!SDGs通信ウェリントン編。フンコロガシにより河川の水質改善を助ける

毎号、世界中から届いた旬の話題を紹介しているBRUTUS本誌の「ET TU, BRUTE? CITY」から出張企画。世界中の約30都市から、今一番ホットなSDGsに関する取り組みをお届けします。今回はウェリントンから!

text: Mari Clothier / edit: Hiroko Yabuki

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家畜の排泄物による河川汚染を、フンコロガシの助けで改善!

自然の豊かさで知られるニュージーランドだが、実のところ水質汚染が大きな問題になっている。以前から指摘されていたが、環境省による調査書「Our Freshwater 2023」で、汚染の主な原因は酪農であることが明らかになった。増加する一方の家畜の排泄物や、牧草のためのリン酸肥料や窒素肥料の過剰使用で水質が悪化。政府が規制を設け、国立大気水圏研究所がさまざまな策を提案するが、打開策とはなっていないのが現状だ。

そんな中、フンコロガシを使って酪農場の水質・土壌の改善を図るダング・ビートル・イノベーションズ(DBI)社に注目が集まっている。その方法はというと、農家と協働しフンコロガシを農地に放すだけ。するとフンコロガシがフンの下にトンネルを掘り、土壌の通気性を高め、水を浸透しやすくする。

丸めたフンを埋めると、その栄養は地下60cmを超えるところまでいきわたり、飼料の草を強く成長させる。そのおかげで雨のための土壌流出が減り、河川に排泄物は流れ込まずに土壌に残る。サステナブルで非侵襲的、費用対効果も上がるこの方法は、政府や環境保護庁にも認定されている。

家畜300頭を飼う平均的な農場の場合、1年分をカバーする費用は、6600NZドルほどになる。DBI社は土壌・季節に応じて適正なフンコロガシを用意し、放すのを手助けする上、導入後の相談も受ける。土壌によるが、1~3年で、フンコロガシのコロニーは確立し、効果が出てくるそうだ。

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