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世界からお届け!SDGs通信 台湾編。伏流水の水利施設にフォーカスした水不足問題への取り組み

毎号、世界中から届いた旬の話題を紹介しているBRUTUS本誌の「ET TU, BRUTE? CITY」から出張企画。世界中の約30都市から、今一番ホットなSDGsに関する取り組みをお届けします。今回は台湾から!

text: Mari Katakura / edit: Hiroko Yabuki

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台湾南部の「二峰圳」と「大潮州人造湖」、伏流水の水利施設で水不足を解消

台湾は昔から慢性的な水不足に悩まされ、日本統治時代から水利事業が進められてきた。その一つが台湾最南端の屏東県来義郷にある地下ダム「二峰圳」で、1923年に台湾製糖株式会社の日本人技師である鳥居信平によって建造された。

台湾は季節による流水量の変化が大きく、雨季には氾濫に悩まされるものの、乾季には干上がり、荒れ果てた土地だった。そこに7年の歳月をかけて造られたのは地下ダムだった。これにより農業が盛んな土地に生まれ変わり、現在も灌漑用水として使用されている。

この一帯は扇状地で、夏場の多雨期には川となって流れるが、冬場に雨が降らなくなると、川床を伏流し、地層内に溜まる。二峰圳はこうした構造を応用し造られた。砂利層でろ過されているので透明度が高く、小魚やエビも棲息している。通常のダムとは異なり、自然に従った構造であることも注目されている。

屏東県では伏流水の活用に積極的で、2018年には台湾初の地下水を引き込んだ人造湖「大潮州」を完成させた。これは東南アジア最大の規模で、生活用水や工業用水の供給のほか、地盤沈下や海水の浸入、地下水の塩水化を防ぎ、治水機能も高い。

昨今、台湾では夏場の水不足が深刻な問題となっているが、屏東県ではこれらの成果で影響を受けていない。今後は他地域でも地下ダムの建設が検討されており、百年前の知恵が未来に向けて生かされている。

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