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シネマコンシェルジュの映画監督論:こがけん「演出や音楽の余白にまでぬかりない監督たちに興奮!」

巨匠から新鋭まで、素晴らしい監督たちが次々と登場する今、観るべき監督を知るには、やっぱり信頼できる映画通の後ろ盾が欲しいもの。独自の審美眼で映画シーンを追いかけ続ける30人に頼ることに。

Illustration: Thimoko Horiguchi / Text: Yoko Hasada, Aiko Iijima, Saki Miyahara, Konomi Sasaki / Edit&Text: Emi Fukushima

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映画好きこがけんへ7つの質問

Q1

あの監督の虜になった名シーンは?

こがけん

ウェス・アンダーソン監督『ライフ・アクアティック』の、息子の存在を知った主人公が船首でたばこを吸うシーン。抑えた演技に隠し切れない感情が滲む瞬間に鳴る「LIFE ON MARS?」(泣)。

Q2

好きな監督のベスト作品は?

こがけん

マイケル・マン監督の“バディもの”。中でも脅迫する/される者の不思議な交感を描いた『コラテラル』は、アクションの質やハードボイルド具合がMAX超え。

Q3

好きな監督のイマイチだった作品は?

こがけん

クエンティン・タランティーノ監督作品で唯一ハマらなかったのが『キル・ビル』です。B級映画を追求するあまり、B級映画ならではの隙がなくなった印象。

Q4

最近になって魅力的に感じるようになった監督は?

こがけん

リドリー・スコット監督。『エイリアン:コヴェナント』では人間を嫌いなんじゃないかと思うほどアンドロイド愛(マイケル・ファスベンダー愛?)が加速。次回作への期待が膨らみます。

Q5

あの監督に撮ってほしい、意外なテーマは?

こがけん

映画化もされたヒッピーSF小説『銀河ヒッチハイク・ガイド』の続編『宇宙の果てのレストラン』を『ビッグ・リボウスキ』なテイストでコーエン兄弟に!

Q6

個人的に今気になっている監督は?

こがけん

『判決、ふたつの希望』のジアド・ドゥエイリ監督。ヘビーな国際問題をエンタメに昇華させる手腕は見事でした。

Q7

将来が楽しみな次世代の監督は?

こがけん

現代版『ブレックファスト・クラブ』とも言うべき『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』を世に出したアリス・ウー監督。まさに面白いのはこれから。

2010年以降の「この監督のこの一本」。
クレイグ・ブリュワーの『ルディ・レイ・ムーア』

芸人だからこその共感と、溢れ出る作り手へのリスペクト。

70年代に活躍したスタンダップコメディアンであり、伝説的映画『ドールマイト』で成功を収めたルディ・レイ・ムーアの伝記映画。パッとしない中年芸人のルディが、“ラップの原型”ともいわれる下ネタの漫談で一躍人気者になる前半、さらなる成功を夢見て手探りで映画製作に乗り出す後半で構成される。

日本の片隅で細々と芸人をやっている僕としては、ルディがネタ帳を前に韻やオチのつけ方に苦心するリアルな描写に「わかるわ〜」とハートを鷲掴みにされ、その後もネタであれ映画であれ「いかに作るか」の過程をつぶさに描くこの作品のあり方に(単調でテンポがいいとは言えないのに……)どんどん魅了されました。

クレイグ・ブリュワー監督は、脚本も担当した『ハッスル&フロウ』でも同様のアプローチを見せていて、ラッパーを夢見る主人公の宅録シーンへの熱量は作品全体の中でも突出したものでした。僕はそこに、監督のあらゆる作り手へのリスペクトを感じずにはいられません。

エディ・マーフィが、往年の満面の笑みとともにカムバックした点も胸アツ。

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