教えてくれた人:竹内みや子(筆記具・持ち方アドバイザー)
筆記具を筆のように持つ
デジタルが主流となり、文字を手書きする機会は減ったものの、仕事上の提出書類や芳名帳など、書かなくなったからこそ、いざという時に恥ずかしい思いをすることも増えたのではないか。かつて同じコンプレックスを抱えていた竹内みや子さん。
臨書で文字を練習するうちに、大切なのは「持ち方だ!」という独自のメソッドに辿り着いた。
「日本語がもともと筆文字で自然と書きやすいように作られていることに気づいたんですね。
字は、縦方向、横方向、円運動というシンプルな動きの組み合わせで、その動きは、筆記具の持ち方で決まる。小筆の動きを再現できる持ち方なら、誰でもきれいな字が書けます」
文字の形を繰り返し練習しなくても、正しい持ち方をしていれば筆記具がきちんと動く。漢字の横線は自然に、やや右上がりに、縦線は真っすぐに引ける。
「親指は人差し指より上に。手のひらに空間を作ってゆったりと。どんな筆記具も、小筆を持つように意識すること。箸を持つ手で手首側の箸を抜いても正しい持ち方になります。持ち方がわかれば、あとは手指の動かし方だけ。
縦線は筆記具を持った手を開いて閉じる。横線は手首を擦るように動かして。曲線は小指を中心に手をくるくる回す円運動で。手指をつながるように運動させることが大事です」
流れるような運動が表れると、字は美しく見えるという。
「文字は人の心を伝えるもの。丁寧にお辞儀をして感謝を表すのと同じように、美しい文字で相手に気持ちを届ける、手書きの文化を残していきたいですね」