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小説『スタンド・バイ・ミー』で味わうキャンプ料理〈ささやかな焚き火で作るハンバーガー〉

無人島で、深い森で、静かな川辺で。物語に描かれた憧れのキャンプ料理を、料理ユニット・オカズデザインが想像力というスパイスを加えて再現します。

Photo: Kasane Nogawa / Text: Saori Takagi / Edit: Yuriko Kobayashi / Cooking: Okaz Design / Styling: Mariko Nakazato

 カスパールのナイフをつかって、ホッツェンプロッツは、いろいろな薬味を小さくきりきざみ、それをフライパンに入れて、かきまぜました。一すると、すぐにおいしそうなにおいが森の中にひろがっていきます。カスパールとゼッペルは、口の中につばがわいて

 バーン、クリス、テディは薪を集め、スラグの上にささやかなキャンプ・ファイヤーを焚いた。クリスは焚火の周囲の草やなにかを完全に片付けた一森はからからに乾いていたので、危険な賭けを避けたのだ。人が働いているあいだ、わたしは木の枝を何本か削り、わたしの兄のデニーが“パイオニアのばち”を、先端が火の上に出るように角度をつけて、しっかりと地面に突き立てた。わたしちは焚火を囲んですわり、肉が炎にあぶられ、肉汁を垂らし、ついに褐色になっていくのを見守った。みんなの胃が食事前の会話を交わしている。

 完全に肉が焼けるまで待ちきれなくなり、各自、パイオニアのばちをつかみ取り、ロール・パンの中にはさみこみ、熱い木のスティックを引きぬく。ハンバーグは外側は黒く焦げているが、中は生で、ひとくちに言えば、うまかった。わたしたちはハンバーガーをがつがつとたいらげてしまうと、裸の腕で口のまわりの脂をぬぐった。

スティーヴン・キング
『スタンド・バイ・ミー』より

焚き火でじっくり炙る、夢のバーガー。

肉の塊を枝に刺して焚き火で焼く…。そんな永遠の憧れを実現してしまったこの料理。子供たちが「パイオニアのばち」と呼ぶ二股の枝にミンチ肉を刺して焼くというのが最大のわくわくポイントです。

キャンプ料理らしい野性味を出したかったので、牛と豚モモの塊肉を刻んでミンチに。少し塊が残っている方がワイルドさが出ます。調味料は塩コショウ、ナツメグ、セージ、パン粉、卵、タマネギ。牛乳はタネが軟らかくなり、枝から落ちてしまうので使いません。

枝にミンチを刺したら、コンロや焚き火の遠火で炙ること約15分。物語のように「ついに褐色になっていくのを」じっくりと見守るのです。

スティーヴン・キング『スタンド・バイ・ミー』より再現して作られた〈ささやかな焚き火で作るハンバーガー〉