良い物件が見つかった!
見晴らしの良さといい洗練されたレトロなデザインといい、まさに理想的。1960年代に建てられたこの家にエヴリンとデヴィッドが住み始めて1年が経つ。
ユニークなのはそもそも建築家が自分のために設計した自邸だったこと。ジョン・シンノという名の日系アメリカ人で、シルヴァー・レイクに佇むこの住宅に終生住み続けたそう。
2代目オーナー、ジョン・V・マトローは南カリフォルニア大学の教授を務める建築家。エヴリンたちの家主であるマトロー教授が「典型的な南カリフォルニアスタイル」と語るシンノ渾身の作はLAの大切な文化遺産なのだ。
「まるで美術品の中に住んでいるよう」とエヴリン。電気のスイッチも水回りも何一つ替えずに、一切オリジナルのまま暮らさないといけない。半世紀以上も前の家だから、電気系統などで不便な面も少なくない。
また「キッチンの床を替えたくても、この家にはこの色でなければ、と教授のお許しが出ないの(笑)」なんてことも。
ハードルは高いが、それを補って余りある住まい、とも語る。
エヴリンがインテリアに目覚めたのはごく近年のこと。ファッション誌のエディターとしてNYの狭いワンルームに住んでいた20代の頃は「家具を買うより、飲みに出かけるタイプでした」。
30代を迎えたからか、暮らしを慈しむ土地柄だからか、LAに引っ越してからは、自然と住まいに目が向くように。わからないことは友人のインテリアデザイナーが教えてくれる。
「家の個性が強いので、呑み込まれないように」好みの家具を買っては家に合わせる。与えられた制約の中で、いかに自分らしさを出すか。“作品”を住みこなす過程も楽しむ2人なのだった。